2026/05/04

コレステロールの薬を飲んでいるあなたへ| 薬だけでは届かない、筋トレが代謝を根本から変える理由

スタチン系薬剤と複合トレーニング——
薬の役割を超えた脂質代謝改善のアプローチ

悩み:コレステロールの薬を飲んでいるのに
代謝が変わらない・数値が安定しない

「食事に気をつけているのに
LDLが下がりきらない」
「薬を飲んでいるけど
根本的に変えたい」

こうした訴えの背景に
運動習慣という
見落とされがちな
介入ポイントがあります。

薬で数値を管理しながら
筋力トレーニングと有酸素運動を
組み合わせて代謝を整える。

この複合的なアプローチが
脂質異常症の包括的な
改善につながります。

現場と自分の経験から

薬局での服薬指導の場面で
「食事制限は頑張っているのに
数値がなかなか改善しない」という
相談を受けることがあります。

詳しく伺うと
筋力トレーニング・
有酸素運動ともに
行っていないケースが
ほとんどです。

競技ボディビルに取り組む中で
筋肉量の増加が
体の代謝全体に
与える影響の大きさを
実感しています。

ただし薬剤師として
正確な情報をお伝えすることが
重要だと考えています。

筋トレだけでLDLが
大きく改善するとは
言い切れません。

薬・食事改善・
有酸素運動・筋力トレーニングの
組み合わせが
最も効果的なアプローチです。

スタチン系薬剤の作用機序と限界

スタチン系薬剤は
HMG-CoA還元酵素を阻害し
肝臓でのコレステロール合成を
抑制します。

その結果
血中LDLコレステロールが低下し
動脈硬化・心血管疾患リスクが
低減されます。

ただし筋肉量を増加させて
基礎代謝を向上させたり
ミオカインの分泌を促進する
薬理作用は持ちません。

脂質代謝の根本的な改善には
薬物療法に加えて
運動習慣による介入が重要です。

運動と脂質プロファイルの関係

148件のランダム化比較試験を
統合したメタアナリシスでは
有酸素運動・筋力トレーニング・
複合トレーニングすべてが
脂質プロファイルの改善に
寄与することが示されています。

中でも有酸素運動と
筋力トレーニングを
組み合わせた複合トレーニングが
LDL低下・HDL上昇・
中性脂肪低下において
最も良好な結果を
示しています。

筋力トレーニング単独では
LDLへの効果は
有酸素運動ほど顕著でない
ことも報告されています。

筋トレはあくまで
代謝を底上げする土台であり
有酸素運動・食事改善との
組み合わせが重要です。

筋肉が代謝を変えるメカニズム

筋肉量が増加すると
安静時のエネルギー消費量
(基礎代謝)が向上します。

基礎代謝の向上により
脂質・糖質が
エネルギーとして
利用されやすくなります。

またミオカイン(筋肉由来の
生理活性物質)の分泌が
促進されます。

IL-6・イリシンなどの
ミオカインが
脂肪利用の促進・
インスリン抵抗性の改善に
関与することが
研究で示されています。

ただしミオカインの研究は
現在も進行中の分野であり
全ての機序が解明されているわけでは
ありません。

現時点での知見として
参考にしてください。

スタチン系薬剤と筋肉副作用——正確な理解のために

スタチン系薬剤は
まれに筋肉関連の副作用
(ミオパチー・横紋筋融解症)が
生じることがあります。

ただしここで重要な研究結果を
お伝えします。

Lancet誌の大規模メタアナリシス
(約15万人対象)では
スタチン服用者に報告された
筋肉症状の90%以上が
スタチンに起因しない
可能性が示されています。

いわゆるノセボ効果
(薬への不安が
症状を引き起こす心理的反応)が
関与しているケースが
多いとされています。

スタチン服用中でも
中等度の運動強度であれば
筋肉の問題を悪化させることなく
筋パフォーマンスを
改善できるという
研究結果も報告されています。

過度に恐れる必要はありませんが
以下の症状が出た場合は
自己判断せず
速やかに処方医・薬剤師に
相談してください。

強い筋肉痛・筋力低下。
尿の色が茶褐色になる。
全身の脱力感。

生活習慣の介入ポイント

脂質プロファイルの改善には
以下の組み合わせが
推奨されます。

筋力トレーニング(週2〜3回)
大きな筋群を鍛える種目を
優先します。
スクワット・デッドリフト・
プッシュアップなど。
週1回・10回から
始めることを推奨します。

有酸素運動(週3〜5回)
早歩き・ジョギング・
水中歩行など。
LDL低下・中性脂肪低下に
特に有効です。

食事改善との組み合わせ
飽和脂肪酸の制限・
食物繊維の増加・
プリン体の管理。
運動だけでなく
食事改善との
組み合わせが重要です。

まず今週から
スクワット10回を
ランニングや散歩に
くっつけて始めることを
推奨します。

まとめ

スタチン系薬剤は
LDLコレステロール管理において
有効な選択肢の一つです。

ただし薬の作用は
コレステロール合成の
抑制にとどまります。

脂質代謝の根本的な改善には
薬物療法に加えて
筋力トレーニングと
有酸素運動の組み合わせ・
食事改善が不可欠です。

スタチンの筋肉副作用を
過度に恐れる必要はありませんが
異常な症状が出た場合は
速やかにご相談ください。

運動習慣の構築・
脂質管理についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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