熱中症と生活習慣——
体温調節が破綻するメカニズムと
「背景」が決める発症リスク
【第1回】熱中症は「暑さ」だけで起こるわけではない
はじめに
「外が暑い=熱中症」
多くの方がこう理解しています。
しかし熱中症の発症は
気温・気象条件だけで
決まるわけではありません。
睡眠不足・脱水・
栄養不足・アルコール・
疲労・発汗機能低下という
生活習慣の「背景」が
熱中症になるかどうかを
大きく左右します。
全5回のシリーズで
熱中症を
生活習慣という視点から
整理していきます。
第1回は
「熱中症とは何か」と
「背景が決める発症リスク」を
解説します。
熱中症のメカニズム
熱中症とは
体温調節機能が破綻した状態の
総称です。
人体は深部体温を
約37℃前後に
維持するために
以下の体温調節機能を
持っています。
発汗による気化熱を利用した
体温放散。
皮膚血管の拡張による
体表への熱移動。
呼吸による熱放散。
暑熱環境下では
発汗が主要な
体温調節手段となります。
この発汗・体温放散の機能が
何らかの原因で
追いつかなくなると
深部体温が上昇し続けます。
深部体温が40℃を超えると
臓器障害・意識障害のリスクが
急激に上昇します。
これが熱中症の
本質的な病態です。
暑さ以外の発症リスク要因
熱中症の発症に関与する
生活習慣的な背景要因を
整理します。
睡眠不足
睡眠不足により
自律神経のバランスが乱れます。
発汗・皮膚血管拡張という
体温調節機能は
自律神経によって
制御されています。
睡眠不足が続くと
この調節機能が
低下します。
前日の睡眠不足が
翌日の熱中症リスクを
高める要因となります。
脱水
体内水分量の低下により
循環血液量が減少します。
発汗のための
水分も不足するため
体温上昇を汗で冷やす
機能が低下します。
体重の1〜2%の水分喪失で
体温調節能力が
低下することが
示されています。
のどの渇きを感じた時点で
すでに脱水が始まっています。
電解質不足
水分だけを大量摂取しても
ナトリウムなどの
電解質が不足すると
低ナトリウム血症(水中毒)の
リスクが生じます。
電解質バランスの乱れは
体液調節・体温調節に
影響します。
「水を飲んでいるのに
熱中症になった」の
背景にこの要因が
関与しているケースがあります。
アルコール摂取
アルコールは
抗利尿ホルモン(ADH)を
抑制し利尿作用を
発揮します。
前日の飲酒により
翌朝の体は
すでに脱水気味の状態に
なっています。
この状態で暑熱環境に
曝露されると
熱中症リスクが
上昇します。
疲労の蓄積
慢性疲労は
自律神経機能・
免疫機能の低下と
関連します。
体温調節を含む
ホメオスタシス維持機能が
低下した状態では
熱中症の発症閾値が
下がります。
発汗機能の低下
汗腺は廃用性変化により
機能が低下します。
エアコン環境での生活が
長く続くと
発汗機能が
低下していきます。
春から初夏にかけての
熱中症が多い理由の一つが
この暑熱順化の未完成です。
室内発症・高齢者以外のリスク
熱中症は屋外だけでなく
室内でも発症します。
エアコンなしの室内・
調理中の台所・
入浴中など
室内での発症が
一定数報告されています。
高齢者に発症が多い理由は
暑さの感知機能低下・
口渇感の低下・
発汗機能低下・
基礎疾患による
体温調節機能への影響が
重なるためです。
ただし若年者でも
睡眠不足・脱水・疲労・
飲酒などの背景要因が
重なれば発症します。
「自分は大丈夫」という
過信が最もリスクを
高める要因の一つです。
熱中症の「生活習慣病的側面」
熱中症は
その日の暑さだけで
決まるものではありません。
日々の睡眠・水分・
栄養・休養という
生活習慣の積み重ねが
「熱中症になりやすい体」か
「なりにくい体」かを
決めています。
症状ではなく背景を見る。
この視点が
熱中症予防においても
重要です。
次回(第2回)は
「水だけでは防げない理由——
電解質と水分補給の正しい知識」を
お伝えします。
熱中症予防・水分管理についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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