2026/05/21

水を飲んでいるのに熱中症になる理由【第2回】| 「水だけ補給」が危険なケースと電解質の正しい知識

水だけでは防げない熱中症——
電解質バランスと
適切な水分補給の科学

【第2回】”水だけ補給”では防げない。
鍵は電解質バランス

はじめに

「水分はしっかり摂っているのに
体がおかしい」

こうした訴えの背景に
電解質不足という
見落とされがちな要因が
あります。

水分補給は量だけでなく
内容・タイミング・
電解質バランスが
重要です。

第2回は
電解質の役割と
適切な水分補給の
科学的な根拠を
整理します。

汗の成分と失われる電解質

汗は水分だけでなく
以下の電解質を
含んでいます。

ナトリウム(主要成分)。
カリウム。
マグネシウム。
カルシウム。

大量の発汗により
水分と同時に
電解質が失われます。

この状態で
水だけを大量補給すると
体液中の電解質濃度が
さらに希釈されます。

低ナトリウム血症(水中毒)のリスク

水のみの過剰補給による
低ナトリウム血症は
以下の症状を
引き起こします。

頭痛・吐き気・倦怠感。
筋肉のけいれん。
重症例では意識障害。

「水を飲んでいるのに
体調が悪化した」の
背景にこの病態が
関与しているケースがあります。

熱中症の症状と
鑑別が難しいことがあるため
注意が必要です。

電解質の生理的役割

電解質は以下の
生理機能に関与します。

ナトリウム
体液の浸透圧維持。
細胞外液量の調節。
神経・筋肉の
興奮性の維持。

カリウム
細胞内液の主要陽イオン。
筋肉収縮・
心機能の調節。

マグネシウム
酵素反応の補因子。
筋肉・神経機能の
維持。

体温調節に必要な
発汗・皮膚血管拡張は
これらの電解質が
適切なバランスで
維持されることで
機能します。

電解質バランスが崩れると
体温調節機能が
低下します。

スポーツドリンクと経口補水液の違い

スポーツドリンクと
経口補水液の
主な違いを整理します。

スポーツドリンク
電解質濃度:中程度。
糖質濃度:高め(約6〜8%)。
用途:運動中・
スポーツ時の補給。
注意点:糖尿病・
血糖管理が必要な方は
大量摂取に注意。

経口補水液
電解質濃度:高め
(ナトリウム濃度が高い)。
糖質濃度:低め(約2〜2.5%)。
用途:脱水・熱中症発症時の
補給。
特徴:腸管での吸収効率が
高い(ORS処方)。

日常の水分補給は
水・麦茶を基本とし
大量発汗時・
屋外作業時に
スポーツドリンクを
活用することが
推奨されます。

熱中症の症状が
出始めた場合は
経口補水液が
第一選択となります。

食事からの電解質補給

日常的な電解質補給は
食事から行うことが
基本です。

ナトリウム
梅干し・味噌汁・
漬物などで補給。
ただし過剰摂取は
高血圧のリスクになるため
バランスが重要。

カリウム
バナナ・アボカド・
じゃがいも・
ほうれん草などで補給。

マグネシウム
ナッツ類・豆腐・
海藻類などで補給。

熱中症対策として
特別なサプリメントを
摂取する必要はありません。

バランスの良い食事が
電解質補給の
基本です。

適切な水分補給の3原則

のどが渇く前に飲む
のどの渇きは
軽度脱水のサインです。
渇く前にこまめに補給します。

少量頻回で飲む
一度に大量に飲むより
少量をこまめに飲む方が
腸管での吸収効率が
高まります。

場面に応じて飲み物を選ぶ
日常:水・麦茶。
大量発汗時:スポーツドリンク。
熱中症発症時:経口補水液。

まとめ

熱中症予防において
水分補給は量だけでなく
電解質バランスが
重要です。

水だけの過剰補給は
低ナトリウム血症のリスクを
生じることがあります。

場面に応じた
飲み物の選択と
食事からの電解質補給を
組み合わせることが
現実的なアプローチです。

次回(第3回)は
「薬・睡眠不足・筋肉量低下など
“なりやすい人”には共通点がある」
を解説します。

水分管理・熱中症予防についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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