2026/05/22

「自分は大丈夫」が一番危ない【第3回】| 飲んでいる薬・睡眠不足・筋肉量低下……熱中症になりやすい人の共通点

熱中症リスクを高める要因——
薬・睡眠不足・筋肉量低下に潜む
“なりやすい人”の共通点

【第3回】薬・睡眠不足・筋肉量低下など
“なりやすい人”には共通点がある

はじめに

熱中症は
気温・湿度などの
環境要因だけで
決まるわけではありません。

服用している薬・
睡眠状態・
筋肉量・疲労の蓄積など
個人の状態が
発症リスクを
大きく左右します。

第3回は
熱中症になりやすい人の
共通点を
薬剤師・競技者の
両方の視点から
整理します。

薬による熱中症リスクの上昇

利尿薬

利尿薬は
腎臓でのナトリウム・
水の再吸収を抑制し
尿量を増加させます。

服用するだけで
体内の水分・
電解質バランスが
変化しやすい状態に
なっています。

暑熱環境下での発汗が
加わると
脱水・電解質異常が
急速に進行する
リスクがあります。

利尿薬服用中の方は
暑い日の水分・
電解質補給を
より意識することが
重要です。

降圧薬(一部)

降圧薬と熱中症の
主なリスクは
「夏場に血圧を下げすぎること」です。

夏は暑さによる
末梢血管の拡張で
血圧が低下しやすい
状態になります。

そこに降圧薬の効果が
加わることで
過度な血圧低下・
起立性低血圧が
生じやすくなります。

立ちくらみ・めまい・
失神のリスクが
上昇します。

降圧薬服用中の方は
急な体位変換を避け
炎天下での急激な動作に
注意することが
重要です。

気になる場合は
処方医・薬剤師への
相談を推奨します。

抗ヒスタミン薬
(特に第1世代に注意)

抗ヒスタミン薬による
熱中症リスクは
薬の世代によって
大きく異なります。

第1世代抗ヒスタミン薬
(クロルフェニラミン・
ジフェンヒドラミンなど)は
強い抗コリン作用を
持ちます。

抗コリン作用により
汗腺からの発汗が
抑制されます。

発汗は深部体温を下げる
最も重要な
体温調節機能です。

この機能が抑制されると
暑熱環境下で
体温が上昇しやすくなります。

市販の風邪薬・
鼻炎薬には
第1世代抗ヒスタミン薬が
含まれているものが
多く注意が必要です。

一方で第2世代抗ヒスタミン薬
(フェキソフェナジン・
セチリジン・
ロラタジンなど)は
抗コリン作用が弱く
発汗抑制のリスクは
低い傾向があります。

病院で処方される
花粉症薬の多くは
第2世代ですが
市販薬を使用している場合は
成分を確認することが
重要です。

「市販薬か処方薬か」
「第1世代か第2世代か」を
薬剤師に確認することを
推奨します。

その他リスクを高める薬

向精神薬・抗うつ薬
体温調節中枢への影響・
発汗抑制の可能性があります。

β遮断薬
心拍数の調節への影響が
体温放散機能に
関与することがあります。

服用中の薬が
熱中症リスクに
影響するかどうか
不明な場合は
かかりつけ薬剤師に
確認することを
推奨します。

睡眠不足による体温調節機能の低下

睡眠不足が続くと
自律神経のバランスが
乱れます。

発汗・皮膚血管拡張という
体温調節機能は
自律神経によって
制御されています。

睡眠不足による
自律神経機能の低下が
体温調節能力を
低下させます。

暑い日の前夜の
睡眠確保が
熱中症予防において
特に重要です。

筋肉量低下と熱中症リスクの関係

筋肉量が少ないことが
熱中症リスクを
高める理由は
以下の通りです。

循環血液量と熱放散

筋肉量が多いと
循環血液量が確保されます。

血液が全身を
効率よく循環することで
体の熱を末梢まで運び
皮膚からの
熱放散が効率的になります。

筋肉量が少ないと
この熱放散能力が
低下します。

水分貯蔵量の低下

筋肉の約75%は
水分で構成されています。

筋肉量が少ないと
体内の水分貯蔵量が
低下し
脱水が進行しやすくなります。

高齢者に熱中症が
多い理由の一つが
加齢による
筋肉量の低下
(サルコペニア)です。

筋力トレーニングによる
筋肉量の維持は
熱中症対応力の
維持にも
つながります。

慢性疲労の影響

慢性的な疲労は
自律神経機能・
体温調節機能の低下と
関連するリスク要因の一つと
考えられています。

疲労が蓄積した状態で
暑熱環境に
曝露されると
体温調節の予備能が
低下している可能性があります。

直接的な臨床エビデンスは
限られていますが
リスク要因の一つとして
認識しておくことが
重要です。

リスク要因の重なりに注意

以下の要因が
複数重なるほど
熱中症リスクが
上昇します。

利尿薬・第1世代抗ヒスタミン薬など
熱中症リスクを高める薬の服用。
睡眠不足の継続。
筋肉量の低下・運動習慣の欠如。
慢性的な疲労の蓄積。
前日の飲酒。

一つ一つは
軽微なリスクでも
重なることで
リスクが大幅に
上昇します。

薬剤師へのご相談を

服用中の薬が
熱中症リスクに
影響するかどうか
不明な場合は
かかりつけ薬剤師に
ご相談ください。

特に市販薬を
自己判断で
使用している場合は
成分の確認が
重要です。

第1世代か第2世代か。
抗コリン作用の有無。

これを一緒に
確認することができます。

次回(第4回)は
「熱中症対策は根性ではなく
暑熱順化と事前準備で決まる」
を解説します。

熱中症リスク・
服薬についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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