■ はじめに
鉄欠乏性貧血に対して
鉄剤(フェロ・グラデュメット・
インクレミン・フェロミア等)を
服用されている方は多くいらっしゃいます。
適切に服用することで
体内の鉄貯蔵量を回復させ
貧血症状を改善する
有効な治療手段です。
ただし、鉄剤の効果を最大化するためには
服用方法と食事内容の両方を
正しく理解することが重要です。
■ 鉄剤の作用機序
経口鉄剤に含まれる鉄は
主に十二指腸・空腸上部で吸収されます。
吸収された鉄は
トランスフェリンと結合し
骨髄へと運ばれ
ヘモグロビン合成に利用されます。
鉄剤は「鉄分を補給する」機序であり、
鉄の吸収率そのものを
直接向上させる薬理作用は
持ちません。
■ 鉄吸収率を左右する食事因子
鉄の吸収率は
同時に摂取する食品により
大きく変動します。
【吸収促進因子】
ビタミンC(アスコルビン酸)は
鉄の吸収促進において
最も重要な因子の一つです。
食事中の非ヘム鉄(植物性・鉄剤)は
三価鉄(Fe³⁺)の形で存在しますが
腸管では二価鉄(Fe²⁺)の形で
吸収されます。
ビタミンCはこの三価鉄を
二価鉄へと還元する作用を持ち
鉄の吸収率を有意に向上させます。
研究では
ビタミンC 100mgの同時摂取により
非ヘム鉄の吸収率が
2〜3倍程度向上することが
報告されています。
【吸収阻害因子】
以下の成分は鉄と結合し
吸収を低下させます。
・タンニン
(緑茶・紅茶・コーヒーに含有)
・カルシウム
(牛乳・乳製品に含有)
・フィチン酸
(穀類・豆類に含有)
・制酸薬(同時服用を避ける)
鉄剤をお茶や牛乳で服用している場合
吸収率が著しく低下します。
水または白湯での服用が基本です。
■ 生活習慣の介入ポイント
鉄剤と並行して
取り入れてほしいのが
ビタミンCの積極的な摂取です。
【鉄剤服用時にビタミンCを摂る】
ビタミンCを多く含む食品として
以下が挙げられます。
・パプリカ(赤):170mg/100g
・ブロッコリー:120mg/100g
・キウイ:69mg/100g
・いちご:62mg/100g
・レモン果汁:50mg/100g
鉄剤を服用するタイミングに合わせて
これらの食品を一品添えるだけで
吸収率の改善が期待できます。
ビタミンCサプリメントの
併用も有効です。
加えて、鉄剤の服用タイミングとして
食後服用により
胃粘膜への刺激を軽減できます。
空腹時服用は胃部不快感を
生じやすいため注意が必要です。
なお服用開始後に
便が黒色化することがありますが
これは鉄の酸化によるものであり
正常な反応です。
■ まとめ
鉄剤は鉄欠乏性貧血の治療において
有効な選択肢の一つです。
ただし、薬の作用は鉄分の補給に
とどまります。
鉄の吸収率という重要な要素は
食事の内容と組み合わせて
初めて最大化されます。
鉄剤で鉄を補いながら、
ビタミンCで吸収率を高めること。
それが、貧血を効率よく改善する
現実的なアプローチです。
貧血・鉄剤の服用でご不明な点がある方は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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