■ はじめに
痔疾患(痔核・裂肛・痔瘻)は
成人の約3人に1人が
経験するとされる
非常に一般的な疾患です。
市販・処方の痔疾患治療薬
(ステロイド含有軟膏・坐剤・
抗炎症薬含有製剤等)を
使用されている方は多くいらっしゃいます。
恥ずかしさから受診をためらい
市販薬のみで対処している方も
少なくありません。
適切に使用することで
症状を軽減できる有効な手段ですが、
再発予防には
生活習慣の改善が不可欠です。
■ 痔疾患治療薬の作用機序
ステロイド含有外用薬は
患部の抗炎症作用により
腫脹・疼痛・かゆみを軽減します。
局所麻酔薬含有製剤は
肛門周囲の知覚神経を遮断し
疼痛を緩和します。
血管収縮薬含有製剤は
患部の血管を収縮させ
出血・腫脹を抑制します。
いずれも「局所の症状を抑える」
機序であり、
便の硬さを変えたり
排便時の肛門への物理的負荷を
軽減する薬理作用は
持ちません。
■ 痔疾患の病態と便の硬さの関係
痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)の
主要な増悪因子の一つが
硬便による肛門への
物理的負荷です。
硬い便が肛門管を通過する際、
肛門粘膜・皮膚への摩擦と
内圧上昇が生じます。
この物理的負荷が繰り返されることで
肛門周囲の静脈叢への
うっ血・炎症が増悪し
痔核の悪化・裂肛の形成・
出血を引き起こします。
便の硬さは大腸での
水分吸収量に依存します。
体内水分量が不足すると
大腸が便からより多くの水分を
吸収しようとするため
便が硬化します。
治療薬で局所の炎症を抑えても
硬便という物理的負荷が
継続する限り症状が
再発するパターンが
臨床現場でも多く見られます。
■ 生活習慣の介入ポイント
痔疾患治療薬と並行して
取り入れてほしいのが
水分摂取量の増加です。
【1日の水分をコップ一杯増やす】
1日の水分摂取量の目安は
食事からの水分を含め
約2リットルとされています。
水分摂取量が増えると
大腸での水分吸収量が減少し
便の含水率が上昇します。
便が柔らかくなることで
排便時の肛門への
物理的負荷が軽減されます。
水・白湯・麦茶での
水分補給が推奨されます。
コーヒー・アルコールは
利尿作用があるため
水分補給としては
カウントしにくい飲み物です。
加えて以下の介入も推奨されます。
・食物繊維の摂取増加
(便のかさ・柔らかさを改善)
・排便時のいきみを避ける
(肛門内圧の上昇を防ぐ)
・長時間のトイレ座位を避ける
(肛門部への血流うっ滞を防ぐ)
・温水洗浄便座の活用
(患部の清潔保持と
血流促進)
症状が2週間以上続く場合・
出血量が多い場合・
痛みが強い場合は
自己判断での対処を続けず
肛門科・消化器科への
受診を推奨します。
■ まとめ
痔疾患治療薬は局所の炎症・疼痛を
和らげる有効な選択肢の一つです。
ただし、薬の作用は
局所症状の緩和にとどまります。
硬便という根本的な増悪因子への介入は、
水分摂取の改善と組み合わせて
初めて完結します。
薬で炎症を抑えながら、
水分補給で便を柔らかくすること。
それが、痔の再発を防ぐ
現実的なアプローチです。
痔の症状でお悩みの方、
市販薬の選択でご不明な点がある方は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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