■ はじめに
不安障害・パニック障害・
適応障害などに対して
抗不安薬を服用されている方は
多くいらっしゃいます。
ベンゾジアゼピン系薬・
SSRI・タンドスピロンなど
病態に応じた選択肢が存在します。
適切に服用することで
過剰な不安・緊張を和らげ
日常生活の質を保つ
有効な治療手段です。
ただし、薬物療法の効果を
最大化するためには
呼吸法による自律神経調整との
組み合わせが重要です。
■ 抗不安薬の作用機序
ベンゾジアゼピン系薬は
GABA-A受容体に結合し
抑制性神経伝達物質GABAの
作用を増強することで
中枢神経系の過剰な興奮を抑制します。
SSRIはセロトニントランスポーターを
阻害することで
シナプス間隙のセロトニン濃度を
増加させ
不安・抑うつ症状を改善します。
いずれも「神経系の過剰な興奮を
抑制する」機序であり、
呼吸パターンを直接改善したり
自律神経バランスを
根本から変化させる
薬理作用は持ちません。
■ 不安と呼吸の関係
(自律神経・呼吸の相互作用)
自律神経系は
交感神経(緊張・活動系)と
副交感神経(弛緩・回復系)の
拮抗的な調節により
心拍・血圧・呼吸・消化を
コントロールしています。
不安・ストレス状態では
視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)が
活性化され
交感神経優位の状態が継続します。
この状態では呼吸が浅く・速くなり
過換気傾向が生じます。
一方、呼吸は自律神経系の中で
唯一随意的にコントロール可能な
機能です。
ゆっくりとした深い呼気は
迷走神経を介して
副交感神経を活性化します。
心拍変動(HRV)が増加し
自律神経バランスが
副交感神経優位へと
シフトします。
抗不安薬で神経系の
過剰な興奮を抑えながら
呼吸法で副交感神経を
意識的に活性化すること。
この両輪が
不安症状への包括的な
アプローチとなります。
■ 生活習慣の介入ポイント
抗不安薬と並行して
取り入れてほしいのが
意識的な呼吸法です。
【4-8呼吸法】
4秒かけてゆっくり鼻から吸い、
8秒かけて口からゆっくり吐く。
吸気の2倍の時間をかけた
呼気により
迷走神経が刺激され
副交感神経が優位になります。
1回3セットを
不安を感じたとき・
就寝前・起床時に実施することを
推奨します。
この呼吸法は
場所・道具を問わず
いつでも実施可能であり
薬との併用において
安全性が高い介入です。
加えて以下の介入も有効です。
・マインドフルネス瞑想
(注意の調整による
不安の認知的処理改善)
・規則的な有酸素運動
(セロトニン・BDNFの
自然な増加促進)
・睡眠リズムの安定化
(概日リズムと
自律神経調節の正常化)
ベンゾジアゼピン系薬の
長期服用・急な中断は
依存性・離脱症状のリスクがあります。
薬の変更・減量は
必ず医師の指示のもとで
行うことが重要です。
■ まとめ
抗不安薬は不安症状を和らげる
有効な選択肢の一つです。
ただし、薬の作用は
神経系の過剰な興奮の抑制に
とどまります。
呼吸パターン・自律神経バランスという
行動的要因への介入は、
呼吸法と組み合わせて
初めて完結します。
薬で不安の波を和らげながら、
深い呼吸で自律神経を整えること。
それが、不安と長く付き合う上での
現実的なアプローチです。
抗不安薬の服用・
メンタルヘルスについて
ご不明な点がある方は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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