睡眠改善の原則②——
体内時計を光でリセットし
早起きから整える
【睡眠改善原則シリーズ・第2回】
はじめに
前回(原則①)では
睡眠圧——日中の活動で
アデノシンを蓄積し
夜の眠気を高める仕組みを
解説しました。
第2回は
もう一つの
睡眠の大メカニズムである
「体内時計(概日リズム)」と
その整え方を扱います。
体内時計のズレが
不眠・リズム障害の
背景にあるケースは
非常に多くあります。
正しいリセット方法を
理解することが
改善の鍵となります。
体内時計の性質とズレの問題
人間の体内時計の
固有リズムは
平均24時間11〜12分
(24.18〜24.2時間)程度です。
Harvard大学の厳密な研究では
24時間11分と
報告されています。
地球の1日(24時間)より
わずかに長く設定されているため
放置すると
体内時計は
毎日約11〜12分ずつ
後ろにズレていきます。
「なんとなく夜型になってきた」
「睡眠・覚醒リズムが
だんだん後ろにズレる」
これは体質ではなく
体内時計が
リセットされないまま
後退し続けている
状態です。
この後退を
毎日修正するメカニズムが
光によるリセットです。
光によるリセットの仕組み
視交叉上核(SCN)と主時計
体内時計の中枢は
脳の視床下部にある
視交叉上核(SCN)です。
SCNは
網膜の内因性光感受性
網膜神経節細胞(ipRGC)から
光の情報を受け取り
主時計をリセットします。
起床時に光を浴びると
SCNが
「今朝だ」という信号を受け取り
体内時計が
24時間に合わせ直されます。
このリセットが
毎朝行われることで
体内時計のズレが
修正され続けます。
光量の重要性と正確な数値
体内時計のリセットには
光量(ルクス)が
重要な要素です。
光治療では
10万ルクスを
多方向から照射する
ケースもあります。
一方で
一般的な家庭の照明は
約150〜300ルクス程度であり
体内時計のリセットには
不十分なことがあります。
屋外の光は
晴れた日は数万ルクス、
曇りの日でも
最低でも数千ルクス以上あります
(曇りの厚さによって
1000〜30000ルクス程度と
変動します)。
カーテンを開けて
窓際に立つだけで
室内照明の
数十倍の光刺激が
得られます。
できれば外出して
直接光を浴びることが
最も効果的です。
主時計と末梢時計の複合アプローチ
体内時計は
SCN(主時計)だけでなく
内臓・皮膚・筋肉など
全身の組織に
末梢時計が
存在します。
重要な違いとして
主時計は光に反応しますが
末梢時計は
食事のタイミングに
強く反応します。
主時計だけをリセットしても
末梢時計がズレていると
体全体の
リズムは整いません。
末梢時計への
有効な刺激として
以下が挙げられます。
食事のタイミング
特に朝食を
決まった時間に食べることが
末梢時計のリセットに
最も有効とされています。
運動のタイミング。
体温変化
(入浴・運動による
体温上昇と低下)。
光刺激だけでなく
これらを組み合わせた
複合的なアプローチが
体内時計全体を
整える上で有効です。
起床時刻固定の戦略
就寝時刻vs起床時刻
就寝時刻の固定は
眠れない夜が続いている場合
実行が難しいことが多いです。
一方で起床時刻は
意志でコントロールできます。
体内時計の整え方において
起床時刻の固定を
最優先にすることが
推奨されます。
「早寝早起き」ではなく
「早起きが早寝を生む」
これが正しい順番です。
無理やりでも
早く起きて光を浴びる。
↓
体内時計がリセットされる。
↓
日中の活動量が増える
(睡眠圧の蓄積)。
↓
夜の眠気が早くなる。
↓
自然と早く眠れるようになる。
この連鎖が
リズムを前進させる
現実的なアプローチです。
睡眠圧×光リセットの組み合わせ
原則①(睡眠圧)と
原則②(光リセット)は
組み合わせることで
より高い効果が
期待できます。
時差ボケ・リズム障害の多くは
この2つの組み合わせで
基本的に解消可能です。
日中しっかり活動して
睡眠圧を高める。
朝に光を浴びて
体内時計をリセットする。
朝食を決まった時間に食べて
末梢時計も整える。
この3つを
同時に実践することが
リズム障害改善の
基本的なアプローチです。
パワーナップの活用
日中の強い眠気の
調整手段として
パワーナップ
(短時間仮眠)が
有効です。
推奨される
パワーナップの方法
時間:10〜20分
研究では10〜20分が
最も効果的な範囲と
されています。
30分を超えると
睡眠慣性(sleep inertia)が
生じ
目覚め後のパフォーマンス低下と
夜の睡眠圧低下の
リスクが上昇します。
タイミング:午後1〜3時
午後3時以降の仮眠は
夜の睡眠を妨げるリスクが
上昇します。
方法:アラームを15分に
セットして横になる。
完全に眠れなくても
横になるだけで
休息効果があります。
パワーナップは
睡眠圧を
適切に管理しながら
日中のパフォーマンスを
維持する
調整ツールとして
活用できます。
まとめ
体内時計は
毎日光でリセットしなければ
11〜12分ずつ
後退し続けます。
朝の光刺激による
主時計のリセットと
朝食・運動を組み合わせた
末梢時計へのアプローチが
体内時計全体を
整えます。
「早寝早起き」ではなく
「早起きが早寝を生む」。
起床時刻の固定と
朝の光習慣が
睡眠改善の
第2の原則です。
次回(第3回)は
睡眠改善の原則3つ目を
お伝えします。
睡眠・体内時計についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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