2026/06/18

8時間眠れていないからダメだと思っていませんか【睡眠改善原則③】| 最適な睡眠時間は個人・年齢・季節・状況で変わるという話

睡眠改善の原則③——
最適睡眠時間は
個人・年齢・季節・状況で変動する

【睡眠改善原則シリーズ・第3回】

はじめに

第1回は睡眠圧、
第2回は体内時計と
光リセットについて
解説しました。

第3回は
「最適な睡眠時間」という
よくある誤解について
整理します。

「8時間睡眠が正解」という
固定観念が
かえって睡眠への
不安・ストレスを
生んでいるケースが
多く見られます。

最適な睡眠時間は
個人差が大きく
状況によっても
変動するという
事実を理解することが
重要です。

「7〜7.5時間が最適」は
平均的傾向に過ぎない

一般的に
「最適な睡眠時間は
7〜7.5時間」と
言われています。

複数のメタアナリシスで
7〜8時間が
健康アウトカムと
最も良好に
関連するという
結果が示されていますが
これは集団レベルの
平均的傾向であり
個人差が大きいことも
研究で確認されています。

睡眠指針の変遷も
この個別性を
反映しています。

厚生労働省の
「健康づくりのための
睡眠ガイド2023」では
成人に対し
「6時間以上」を
目安として
示しています。

旧指針では
成人6〜9時間・
高齢者6〜8時間という
幅のある目標値が
使われており
改訂を経て
個別性が
より強調される
方向に変化しています。

画一的な
「8時間睡眠」という
固定観念を
持ち続けることは
不必要な不安を
生む可能性があります。

年齢による睡眠の変化
——「必要量の減少」ではなく
「眠る能力の低下」

年齢とともに
睡眠時間が
短くなる傾向に対して
重要な区別が
必要です。

これは
「必要な睡眠量」が
減少しているのではなく
「眠る能力」が
低下している
側面が大きいことが
研究で示されています。

年齢とともに
深睡眠・REM睡眠の
割合が減少し
実際に眠れる時間が
約10年ごとに10分程度
低下する傾向があります。

つまり
高齢になって
睡眠時間が短くなるのは
「睡眠が必要なくなった」のではなく
「眠りたいのに
うまく眠れなくなっている」
可能性が高いということです。

国際的な指針では
高齢者にも
7〜8時間程度の
睡眠が
推奨されており
必要量そのものの
低下を示す
明確な根拠は
示されていません。

「年齢だから
睡眠時間が
短くて当然」と
判断するのではなく
睡眠の質の改善に
取り組む余地が
あることを
理解しておくことが
重要です。

なお年齢層によって
推奨される睡眠時間は
異なります
(乳幼児・成人・高齢者で
基準が異なる)。
これは
発達段階に応じた
一定の方向性であり
間違いではありません。

季節による睡眠時間の変動

冬季に睡眠時間が
長くなる傾向は
複数の研究で
確認されています。

73百万夜分の
ウェアラブルデータを
用いた大規模研究では
冬と夏の睡眠時間の差は
平均15〜20分程度と
報告されています。

個人差は大きく
季節差がほとんどない人と
比較的大きい人の
両方が存在します。

季節に合わせて
睡眠時間を
調整することが
合う人もいれば
年間を通じて
一定の睡眠時間を
保つことが
合う人もいます。

自分のパターンを
把握することが
重要です。

生活フェーズ・目標による変化

睡眠時間は
ライフステージ・
目標によっても
変動します。

高負荷期

起業・転職・
大きなプロジェクトなど
負荷が大きい
時期は
睡眠時間が
短くなりがちです。

短期的には
許容範囲ですが
慢性的な
睡眠不足は
回避すべきです。

安定・調和を
重視する時期

家族との
穏やかな時間を
重視する
ライフステージでは
心地よく感じる
睡眠時間を
優先する
選択も合理的です。

パフォーマンス
向上期

高いレベルでの
スキルアップ・
パフォーマンス向上を
目指す時期は
睡眠時間を
多めに確保し
回復・学習効果を
最大化する
方針が有効です。

研究では
睡眠延長が
スプリントタイム・
精度・気分の
改善につながることが
実験的に示されており
アスリートへの
推奨睡眠時間は
7〜9時間とされています。

トップアスリートが
睡眠時間を
多く確保するのは
睡眠を
パフォーマンスへの
投資として
位置づけている
ためです。

「今の自分にとっての最適」
という視点(注意点付き)

最適な睡眠時間を
判断する基準は
以下のように
整理できます。

現在の人生の
フェーズ・目標に
支障がなければ
その時点の
睡眠時間が
「今の自分にとっての
最適」の目安です。

ただし重要な注意点があります。

慢性的な睡眠不足が
蓄積すると
眠気に対する
認知的な適応
(adaptation)が起こり
自覚症状を
感じにくくなることが
研究で知られています。

「日中に支障を
感じないから
問題ない」という
判断は
あくまで
目安の一つであり
過信は避けるべきです。

8時間という
固定観念を
外しつつも
日中のパフォーマンス・
気分・体調を
継続的に
モニタリングすることが
重要です。

現場と自分の経験から

競技ボディビルに
取り組む中で
試合期と
オフ期で
必要な睡眠時間が
異なることを
実感しています。

トレーニング強度・
負荷が高い時期は
回復のために
睡眠時間を
多めに確保します。

負荷が低い時期は
それより
短い睡眠時間でも
問題ないことが
多いです。

固定的に
「常に同じ時間
眠らなければ」と
考えるのではなく
現在の身体的・
精神的負荷に
合わせて
調整することが
重要だと
実感しています。

実践的アプローチ:
PDCAで自分の最適値を見つける

睡眠時間と
日中のパフォーマンスを
記録し
継続的に
調整することを
推奨します。

記録する項目

睡眠時間。
入眠・起床時刻。
日中の集中力・
気分・体調。
パフォーマンス
(仕事・運動等)の質。

PDCAサイクル

Plan:仮の睡眠時間を設定する。
Do:1〜2週間継続する。
Check:日中のパフォーマンスを評価する。
Action:睡眠時間を調整する。

このサイクルを
繰り返すことで
「自分にとっての
最適な睡眠時間」が
明確になっていきます。

ただし慢性的な
睡眠不足は
自覚しにくいことを
念頭に置き
記録に基づいた
客観的な評価を
心がけてください。

まとめ

最適な睡眠時間は
個人・年齢・季節・
生活フェーズによって
変動します。

年齢による
睡眠時間の短縮は
「必要量の減少」ではなく
「眠る能力の低下」である
可能性が高いことに
注意が必要です。

「8時間が正解」という
固定観念を外し
今の自分の
人生のフェーズ・目標に
支障がない睡眠時間を
目安として
受け入れつつ
慢性的な睡眠不足の
可能性にも
注意を払うことが
重要です。

PDCAサイクルで
自分の感覚を
磨いていくことが
睡眠改善の
第3の原則です。

次回(第4回)は
睡眠改善の原則4つ目を
お伝えします。

睡眠・生活習慣についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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