2026/06/19

「8時間寝たのに疲れが取れない」の正体【睡眠改善原則⑤】| 最初の90分の深いノンレム睡眠が、回復の鍵を握っている

睡眠改善の原則⑤——
全ての睡眠段階に意味があるが
最重要は「深いノンレム睡眠」

【睡眠改善原則シリーズ・第5回】

はじめに

これまでのシリーズでは
睡眠圧・体内時計・
最適睡眠時間・
食事とアルコールの設計について
解説してきました。

第5回は
睡眠の「質」を理解するための
基本知識である
睡眠段階について
整理します。

睡眠の量だけでなく
「どの段階の睡眠が
どれだけ取れているか」が
回復の質を
大きく左右します。

睡眠の3段階と判定方法

睡眠は脳波の
パターンによって
大きく3つの段階に
分類されます。

深いノンレム睡眠。
浅いノンレム睡眠。
レム睡眠。

これらが
一晩のうちに
複数回
繰り返されます。

なお現在の
睡眠医学の標準基準
(AASM基準)では
浅いノンレムを
さらにN1・N2に
分けた
4段階分類が
用いられています。

本記事では
実践的な理解の
しやすさを優先し
3分類で
解説します。

深いノンレム睡眠の
判定基準

深いノンレム睡眠は
脳波における
デルタ波
(ゆっくりとした
高振幅の波)が
優位に出現している
状態によって
判定されます。

なお
かつての分類基準では
デルタ波の
出現比率20%以上という
数値基準が
使われていましたが
現在のAASM基準では
波形の特徴
(0.5〜2Hz・75μV以上)に基づく
判定方法に
変更されています。

深いノンレム睡眠の
生理的役割

深いノンレム睡眠は
脳・身体の回復を
担う
最重要な時間帯です。

主な生理的機能

老廃物の除去
(グリンパティック系の活性化)

深いノンレム睡眠中に
脳内の
グリンパティック系
(脳脊髄液による
老廃物排出システム)が
活性化し
アミロイドβなどの
老廃物の
クリアランス
(除去)が
強く行われます。

睡眠中は
覚醒時と比較して
このクリアランス機能が
約2倍に
増加することが
確認されています。

これは
認知機能の維持・
認知症予防の観点からも
重要な機能です。

成長ホルモンの分泌

成長ホルモンの
分泌は
深いノンレム睡眠
(徐波睡眠)に
集中しており
分泌量と
深いノンレム睡眠の量には
線形の関係が
確認されています。

筋肉・組織の
修復・成長に
直結します。

免疫機能の調整

深いノンレム睡眠中は
免疫系の
調整・強化が
行われることが
知られています。

浅いノンレム睡眠の役割

浅いノンレム睡眠には
以下の機能が
関与しています。

記憶の定着。
学習能力の向上。

これらについては
比較的
強い研究的支持が
あります。

運動神経の発達への
関与も
示唆されていますが
この点については
現在も
研究者間で
議論が続いている
分野です。

断定的な
結論には
注意が必要です。

これらの機能は
日中に
学習・運動などの
新しい刺激を
多く受けた場合に
重要性が
高まると
考えられます。

逆に
日中の学習・運動量が
少ない場合は
浅いノンレム睡眠の
必要量が
相対的に
低下する可能性があります。

レム睡眠の役割と
臨床的な注意点

レム睡眠の役割

レム睡眠は
夢を見る時間として
知られていますが
近年の研究では
以下との関連が
注目されています。

死亡率。
メンタルヘルスの不調。
認知症リスク。

特に認知症リスクについては
レム睡眠の割合が
1%減少するごとに
認知症リスクが
約9%上昇するという
データが
報告されています。

レム睡眠に関連する
生理現象

レム睡眠中は
筋肉の緊張
(筋緊張)が
極端に
低下する特徴があります
(レム無動)。

これは
夢の内容に応じて
体が
実際に動いてしまうことを
防ぐための
生理的メカニズムです。

この機能に
異常が生じると
以下のような
臨床的な現象が
起こることがあります。

金縛り
(睡眠麻痺):
意識は覚醒しているが
筋肉が
動かない状態。

レム睡眠行動障害:
レム無動が
正常に機能せず
夢の内容に応じて
体が動いてしまう状態。
高齢者に多く
将来的な
神経変性疾患との
関連も
指摘されています。

実務的プライオリティ:
現代人は深いノンレムの
確保を最優先すべき

現代人の睡眠における
最大の課題は
深いノンレム睡眠の
不足です。

リラックスできていない状態では
深いノンレム睡眠への
移行が
妨げられます。

実際の計測データでは
深いノンレム睡眠が
30分以下、
場合によっては
0分という
ケースも
少なくありません。

睡眠時間が
十分に確保されていても
深いノンレム睡眠が
不足していると
回復感の乏しい
睡眠になります。

最初の睡眠サイクルの重要性

睡眠は
約90分の
サイクルを
繰り返す構造を
持っています。

深いノンレム睡眠は
睡眠の前半、
最初の2〜3サイクルに
集中して
出現する傾向があります。

最初のサイクルで
深いノンレム睡眠を
十分に確保することは
睡眠の質において
極めて重要な
要素です。

ただし
「最初のサイクルが
その後の睡眠の質を
すべて決定する」という
直接的な因果関係を
証明する強いエビデンスは
現時点では
限定的であることも
正確に
理解しておく必要があります。

「最初のサイクルが
最重要である」という
表現がより正確です。

実務的には
入眠後できるだけ早く
深い睡眠へ
移行できる環境を
整えることが
重要な原則です。

現場と自分の経験から

競技ボディビルに
取り組む中で
睡眠時間の長さより
入眠直後の
睡眠の深さが
回復の質に
直結することを
実感しています。

入眠後に
リラックスできず
浅い睡眠が
続いた日は
長時間眠っても
疲労が
抜けにくい
傾向があります。

就寝前の
リラックス習慣を
整え
スムーズに
深い睡眠へ
移行できた日は
比較的短時間でも
回復が早い
ことを実感しています。

深いノンレム睡眠を
確保するための
実践ポイント

最初のサイクルで
深いノンレム睡眠を
確保するために
以下が重要です。

就寝前の
リラックス環境の整備
スマートフォン・
テレビの使用を
就寝直前まで
続けないこと。

寝室環境の最適化
温度・湿度・
明るさを
睡眠に適した
状態に整えること。

入眠儀式の確立
毎晩同じ
リラックス行動を
取ることで
入眠への
スムーズな移行を
促すこと。

まとめ

睡眠には
深いノンレム・
浅いノンレム・
レムという
3つの段階があり
それぞれに
異なる生理的役割が
あります
(医学的には
浅いノンレムは
さらに細分化されます)。

その中でも
深いノンレム睡眠が
脳・身体の回復を担う
最重要な時間帯です。

現代人の多くは
この深いノンレム睡眠が
不足している傾向にあり
最初の睡眠サイクルで
深い睡眠を
確保することが
睡眠改善の
重要な鍵となります。

次回(第6回)は
睡眠改善の原則6つ目を
お伝えします。

睡眠の質・回復についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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