はじめに
前回(第3回)は
可逆性の原理について
解説しました。
第4回は
3つの基礎原理の
最後である
「特異性の原理」を
詳しく解説します。
「運動しているのに
目的が
達成できない」という
悩みの多くは
この原理への
理解不足が
背景にあります。
特異性の原理とは
特異性の原理とは
身体は
与えられた刺激の
種類に応じて
特異的に
適応するという
トレーニング科学の
基礎原理です。
つまり
「行った運動の種類に
対応する機能が
向上する」一方で
「行っていない種類の
機能は
向上しにくい」という
原理です。
具体例による理解
歩行運動による適応
ウォーキングを
継続することで
持久力・
心肺機能の向上が
得られます。
これは
「歩行」という
特異的な刺激に対して
身体が
心肺機能・
持久力という
特異的な
能力を
向上させる
方向に
適応するためです。
ただし
ウォーキングのみでは
筋力の向上効果は
限定的です。
レジスタンス
トレーニングによる適応
筋力トレーニングを
継続することで
筋力・筋肉量の
増加が
得られます。
これは
「筋肉への
負荷」という
特異的な刺激に対して
身体が
筋力という
特異的な
能力を
向上させる
方向に
適応するためです。
ただし
筋力トレーニングのみでは
持久力・柔軟性の
向上効果は
限定的です。
ストレッチング
による適応
ストレッチングを
継続することで
関節可動域・
柔軟性の向上が
得られます。
これは
「関節の
大きな可動」という
特異的な刺激に対して
身体が
柔軟性という
特異的な
能力を
向上させる
方向に
適応するためです。
ただし
ストレッチングのみでは
筋力・持久力の
向上効果は
限定的です。
「運動しているのに
目的が達成できない」
背景にある問題
「運動をしているのに
目的とする
身体機能が
向上しない」という
悩みを
持つ方の多くは
運動の量・
取り組みの
熱心さが
不足しているのではなく
「目的とする機能」と
「実施している
運動の種類」に
ミスマッチが
生じていることが
原因である
ケースが
多く見られます。
具体例:
筋力向上を
目的としながら
ウォーキングのみを
行っている。
柔軟性向上を
目的としながら
筋力トレーニングのみを
行っている。
持久力向上を
目的としながら
ストレッチングのみを
行っている。
このようなミスマッチがある場合
運動への
取り組みを
継続しても
目的とする方向への
進展は
得られません。
目的別の運動選択
特異性の原理に基づき
目的別に
適切な
運動種別を
整理します。
持久力
(心肺機能)の向上
ウォーキング・
ジョギング・
サイクリング・
水泳などの
持久的運動。
筋力の向上
レジスタンス
トレーニング
(自重・
フリーウェイト・
マシン等)。
柔軟性の向上
ストレッチング・
ヨガ・
モビリティ
エクササイズ。
バランス能力の向上
片足立ち・
バランス
トレーニング・
太極拳など
固有受容性感覚を
活用する運動。
運動を
選択する際は
「何を
向上させたいか」を
明確化することが
出発点となります。
複数の目的が
ある場合の
アプローチ
健康寿命の
維持・向上を
目的とする場合
筋力・持久力・
柔軟性・
バランス能力の
いずれも
重要な要素です
(この点については
シリーズ第5回の
「全面性の原則」で
詳しく
解説します)。
複数の
身体機能の
向上を
同時に
目指す場合は
それぞれに
対応する
運動種別を
組み合わせる
複合的な
アプローチが
必要です。
ただし
すべての要素を
同時に
高強度で
取り組むことは
継続性の観点から
現実的ではない
場合があります。
「現時点で
最も優先すべき
身体機能は何か」を
明確にし
優先順位に基づいて
運動種別を
選択・配分する
アプローチが
実践的です。
現場と自分の経験から
競技ボディビルに
取り組む中で
特異性の原理は
トレーニング設計の
基本原則です。
筋肥大・筋力向上を
目的とする場合
高負荷・低レップの
レジスタンス
トレーニングが
必要です。
持久力の向上を
目的とする場合
これとは
異なる種類の
トレーニングが
必要になります。
「単一の
トレーニング種別のみで
すべての
身体機能が
向上する」という
ことはなく
目的に応じて
明確に
トレーニング内容を
変える必要があることを
実践的に
理解しています。
これは
競技者に限らず
一般の方の
健康づくりにおいても
同様に
当てはまる
原理です。
実践的アプローチ:
目的の明確化から
始める
特異性の原理を
活用した
運動選択の
ステップは
以下の通りです。
ステップ1:
目的の明確化
「体力(持久力)」
「筋力」
「柔軟性」
「バランス能力」の
うち
現時点で
最も優先したい
項目を
明確にします。
ステップ2:
対応する運動の選択
明確化した
目的に
対応する
運動種別を
選択します。
ステップ3:
複合的な
アプローチへの
発展
基本となる
運動が
定着した後
段階的に
他の身体機能に
対応する
運動を
追加していきます。
このプロセスを
通じて
最終的には
複数の身体機能を
バランスよく
向上させる
アプローチへと
発展させることが
可能です。
まとめ
特異性の原理は
身体が
与えられた刺激の
種類に応じて
特異的に
適応するという
トレーニング科学の
基礎原理です。
「運動しているのに
目的が達成できない」場合
運動の量・
熱心さの
不足ではなく
目的と
運動種別の
ミスマッチが
原因である
可能性が高いです。
目的を
明確化し
それに
対応する
運動種別を
選択することが
効果的な
運動プログラム設計の
出発点です。
次回(第5回)は
5つの実践的原則の
最初である
「全面性の原則」を
解説します。
運動・健康づくりについてご不明な点は
お気軽にご相談ください。
───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net
©2023 TSUNAGARUCRAFT