はじめに
これまでの4回では
運動の3つの基礎原理
(過負荷の原理・
可逆性の原理・
特異性の原理)を
解説してきました。
第5回からは
実際の
運動指導で
活用される
5つの実践的原則に
入ります。
最初の原則は
「全面性の原則」です。
健康寿命の
維持・向上を
目的とする場合
この原則は
特に
重要な
位置づけを
持っています。
全面性の原則とは
全面性の原則とは
身体の
特定部位・
特定機能のみを
重点的に
鍛えるのではなく
全身を
バランスよく
発達させるべきであるという
原則です。
腕のみ、
または
足のみを
鍛えるという
部分的な
アプローチではなく
以下の
4つの要素を
総合的に
考慮することが
求められます。
筋力。
持久力
(心肺機能)。
柔軟性。
バランス能力。
4つの要素の
それぞれの役割
筋力
立ち上がる・
物を持ち上げる・
歩行するなどの
基本的な
動作の
基盤となる
能力です。
筋力の低下は
日常生活動作
(ADL)の
困難さに
直結します。
持久力
(心肺機能)
階段の
継続的な
昇降・
長時間の
歩行などを
可能にする
能力です。
心臓・肺の
機能と
密接に
関連しています。
柔軟性
関節の
可動範囲を
指します。
柔軟性の低下は
怪我のリスク増加・
動作の質の
低下に
つながります。
バランス能力
転倒を
防止するための
能力です。
特に
高齢期において
重要性が
増す要素であり
転倒は
骨折・
要介護状態への
移行に
直結する
重大な
リスク要因です。
単一要素への
偏重がもたらす
問題点
筋力トレーニングのみに
取り組んでいる場合
以下のような
リスクが
残存します。
バランス能力が
不十分な場合
筋力が
十分であっても
転倒リスクは
減少しません。
柔軟性が
不十分な場合
日常的な動作において
怪我・疼痛が
発生しやすくなります。
持久力が
不十分な場合
日常生活において
易疲労性
(疲れやすさ)が
生じます。
「筋力さえ
十分であれば
健康上の問題は
解決される」という
考え方は
不十分であり
4つの要素を
バランスよく
考慮する
必要があります。
健康寿命の観点における
全面性の原則の重要性
健康寿命とは
介護を
必要とせず
自立した
生活を
継続できる
期間を
指します。
健康寿命の
延伸において
全面性の原則は
特に
重要な視点です。
要介護状態に
至る主要な
原因として
以下が
挙げられます。
転倒・骨折
(バランス能力・
筋力の
複合的な
低下に起因)。
筋力低下による
動作の困難。
これらの
リスク要因は
筋力単独ではなく
バランス能力・
柔軟性とも
密接に
関連しています。
筋力トレーニングのみに
取り組んでいる場合
転倒予防の観点では
不十分である
可能性があります。
4要素の
バランスの取り方
——具体的な実践方法
全面性の原則を
実践に
取り入れる際は
「すべてを
完璧に行う」のではなく
基本的な活動を
組み合わせることが
現実的な
アプローチです。
筋力の維持・向上
スクワット・
壁を使用した
腕立て伏せなど
基本的な
レジスタンス
トレーニング。
持久力の維持・向上
ウォーキング・
階段の利用など
日常生活に
組み込める
持久的活動。
柔軟性の維持・向上
朝・晩の
簡単な
ストレッチング。
バランス能力の
維持・向上
片足立ち
(目安:30秒程度)・
継ぎ足歩行
(一直線上を
継ぎ足で
歩行する動作)。
これらを
1週間の
スケジュールの中に
段階的に
組み込んでいくことが
実践的な
アプローチです。
現場と自分の経験から
競技ボディビルに
取り組む中で
筋力・筋肥大への
意識が
強くなりがちな
側面があります。
しかし
柔軟性・
バランス能力を
軽視すると
怪我のリスクが
上昇することを
実践的に
経験しています。
筋力のみを
追求するのではなく
柔軟性・
バランス能力も
意識的に
トレーニングに
組み込むことで
パフォーマンス向上と
怪我予防の
両立が
可能になることを
実感しています。
これは
競技者に
限らず
一般の方の
健康づくりにおいても
同様に
当てはまる
考え方です。
セルフチェックの
実践方法
自身の
運動習慣を
4つの要素の
観点から
振り返ることを
推奨します。
筋力トレーニングを
行っているか。
持久的な
運動を
行っているか。
柔軟性
トレーニングを
行っているか。
バランス
トレーニングを
行っているか。
いずれかの要素が
「全く
行われていない」場合は
その要素を
小規模からでも
取り入れることを
推奨します。
例:
片足立ち30秒からの
導入。
まとめ
全面性の原則は
筋力・持久力・
柔軟性・
バランス能力という
4つの要素を
全身にわたって
バランスよく
発達させるべきであるという
原則です。
単一の要素
(特に筋力)のみに
偏重した
運動習慣は
健康寿命の
延伸という観点では
不十分である
可能性があります。
特に
転倒予防の観点からは
筋力に加えて
バランス能力・
柔軟性も
総合的に
考慮することが
重要です。
次回(第6回)は
2つ目の実践的原則である
「意識性の原則」を
解説します。
運動・健康づくりについてご不明な点は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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