2026/07/01

個別性の原則 ——運動も薬と同様に 個別化が必要である 【運動の原理原則シリーズ・第8回】

 

はじめに

前回(第7回)は
漸進性の原則について
解説しました。

第8回は
4つ目の
実践的原則である
「個別性の原則」を
詳しく解説します。

薬物療法における
個別化の概念と
共通する
重要な原則です。

個別性の原則とは

個別性の原則とは
個人の年齢・
体力・
健康状態・
既往歴などによって
最適な運動は
異なるという
原則です。

20代男性、
80代女性、
膝関節に
疼痛を有する方では
処方すべき運動が
それぞれ
異なります。

画一的な
運動プログラムを
すべての人に
適用することは
適切ではありません。

薬物療法との
共通点

この原則は
薬物療法における
個別化の概念と
本質的に
共通しています。

同一の
適応症
(例:高血圧)に対しても

患者の
年齢・体重・
合併症の有無・
腎機能などによって

処方される
薬剤の種類・
用量は
異なります。

「特定の疾患の
患者全員に
同一の薬剤・
用量を
処方する」という
ことはありません。

運動処方においても
本来は
同様の
個別化の視点が
必要です。

「健康に良い」という
理由のみで
画一的に
特定の運動を
推奨することは
潜在的な
リスクを
伴う場合があります。

具体例による
個別化の必要性

20代男性

一般的に
筋力・体力の
ベースラインが
比較的
高い状態にあります。

高強度の
トレーニングへの
耐容性も
高い傾向があり

過負荷の原理を
積極的に
活用した
運動プログラムが
適している
場合が多いです。

80代女性

加齢に伴う
筋力低下・
骨密度低下が
見られることが
多く

転倒・骨折リスクへの
配慮が
特に
重要です。

いきなり
高強度の運動を
導入することは
リスクが高く

バランス
トレーニング・
低強度の
筋力トレーニングから
段階的に
導入することが
適切です。

膝関節に
疼痛を有する方

膝関節への
負荷が
大きい運動
(ジャンプ動作・
深いスクワットなど)は
回避する
必要があります。

水中運動・
膝関節への
負担が
少ない
代替的な
運動様式を
選択することが
重要です。

「他者に効果的だった運動」の
限界

SNS・
メディアにおいて
「特定の運動で
身体的な変化が
得られた」という
情報が
広く
共有されています。

しかし
情報発信者と
受け手の間には

年齢・体力・
既往歴・
身体的状態に
個人差が
存在します。

ある個人に
効果的であった
運動プログラムが
別の個人にも
同様の効果を
もたらすとは
限りません。

それどころか
個人の状態によっては
怪我のリスクと
なる可能性も
あります。

個別化のために
考慮すべき要因

適切な
運動処方を
行うために
考慮すべき
要因を
整理します。

年齢

年齢によって
骨密度・筋力・
心肺機能の
ベースラインが
異なります。

既往歴・
現在の身体状態

関節
(膝・腰・肩等)の
疼痛・
過去の外傷の
有無。

服薬状況

降圧薬・
血糖降下薬などを
服用している場合
運動強度・
タイミングへの
配慮が
必要な
ケースがあります。

例えば
インスリン・
SU薬を
服用中の方は
運動による
低血糖リスクへの
注意が
必要です。

現在の
活動量

日常的な
活動量が
高い方と
座位中心の
生活を送る方では
導入すべき
運動強度の
出発点が
異なります。

目的

第4回で
解説した
特異性の原理とも
関連し
改善したい
身体機能によって
選択すべき
運動が
変わります。

現場と自分の経験から

薬局での
服薬指導の場面で

「運動を
取り入れましょう」という
アドバイスを
行う際

患者の状態に応じて
全く異なる
内容を
提案しています。

膝関節に
疼痛がある方には
水中ウォーキングを
提案します。

骨粗鬆症の
リスクがある方には
骨に
適度な
負荷をかける
運動を
提案します。

降圧薬を
服用中の方には
急激な
強度上昇を
避けるよう
助言します。

「運動しましょう」という
一般的な
アドバイスのみでは
実践的な
助言には
なりません。

個人の状態に
即した
提案を
行うことで
初めて
意味のある
助言となります。

専門家への相談を
推奨するケース

個別性の原則を
踏まえると
以下に
該当する方は

自己判断で
運動を
開始する前に
医師・
理学療法士・
運動指導の
専門家への
相談を
推奨します。

持病
(特に
心血管疾患・
糖尿病・
骨粗鬆症等)を
有する方。

特定部位に
疼痛がある方。

高齢の方
(特に
転倒歴がある方)。

運動経験が
ほとんどない方。

服薬中の薬剤が
運動に
影響を
与える
可能性がある方。

「自分に
適した運動が
判断できない」ことは
特殊な状況では
ありません。

専門家への相談は
適切な
個別化を
行うための
合理的な
プロセスです。

まとめ

個別性の原則は
年齢・体力・
健康状態・
既往歴などによって
最適な運動が
個人ごとに
異なるという
原則です。

薬物療法における
個別化の概念と
本質的に
共通しています。

「健康に良い」という
理由のみで
画一的な
運動プログラムを
すべての人に
適用することは
適切ではなく

個人の状態に
即した
運動処方が
重要です。

持病・疼痛・
高齢・
運動未経験などの
要因がある場合は
専門家への
相談を
検討してください。

次回(第9回・最終回)は
最後の
実践的原則である
「反復性・継続性の原則」を
解説します。

運動・健康づくりについてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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