2026/07/17

生活習慣でフレイル・サルコペニア・ロコモを予防する ——健康寿命は生活全体で決まる 【フレイル・サルコペニア・ロコモ予防編・第9回】

 

はじめに

第7回は栄養、第8回は運動についてお伝えしました。しかし健康寿命を守るために必要なのは、栄養と運動だけではありません。毎日の生活全体が、フレイル・サルコペニア・ロコモの予防につながっています。

第9回は「生活習慣で予防する」という視点で、5つの習慣を整理します。

よく寝る

睡眠は、体の修復・回復・免疫機能の維持に深く関わっています。成長ホルモンは入眠後の深いノンレム睡眠中に集中して分泌され、筋肉の修復はこの時間に行われます。つまり睡眠不足は筋肉の回復を妨げ、フレイル・サルコペニアを加速させる要因になります。

高齢になると「眠れない」「夜中に目が覚める」という悩みが増えます。しかしこれは「眠る必要量が減った」のではなく、「眠る能力が低下している」側面が大きいです。睡眠の質を改善することは、健康寿命に直接影響します。

実践として、毎朝同じ時間に起きること・寝る前にスマートフォンを見る時間を減らすこと・寝室を暗く静かに整えることが基本のアプローチです。

人と話す

社会的なつながりは、フレイル予防において栄養・運動と同じくらい重要です。第6回でお伝えした負のループの中に「人と会わなくなる→食欲が落ちる→筋肉が減る」という流れがありました。

人と話すことには以下の複合的な効果があります。

– 食欲の維持:人と食事を共にすることで食欲が保たれやすくなる
– 意欲の向上:会話によって精神的な活力が回復する
– 認知機能の刺激:言語・コミュニケーションが認知機能の維持に関与する

「たわいもない会話」でも十分です。家族との食事・近所の方との挨拶・友人への電話。毎日誰かと言葉を交わす機会を意識的に作ることが、社会的フレイルの予防になります。

社会的孤立は、フレイルを加速させる最大のリスク要因の一つです。人とのつながりを維持することが、体と心の両方を守ります。

趣味を持つ

趣味を持つことは、意欲・活動量・社会参加の3つを同時に支えます。

意欲が低下すると活動量が落ち、活動量が落ちると筋肉が減り、筋肉が減ると外出が億劫になる。この負のループを断ち切る力を、趣味は持っています。「やりたいことがある」という気持ちが、体を動かす最大の内発的動機になります。

趣味は体を動かすものでなくてもいいです。囲碁・将棋・手芸・読書・料理。何でも構いません。ただし可能であれば「人と一緒にやる趣味」「外に出る機会がある趣味」は、社会的つながりと活動量の両方をカバーできるため特におすすめです。

「続けられている趣味がある」ということ自体が、フレイル予防の保護因子になります。

定期的に体を動かす

第8回で詳しくお伝えした通り、運動は継続してこそ効果があります。「特別な運動プログラムをこなさなければ」と構えず、日常の中に体を動かす機会を組み込むことが大切です。

日常でできる体を動かす機会の例として以下が挙げられます。

– 買い物に歩いていく
– エレベーターより階段を使う
– テレビを見ながら足を動かす・ストレッチをする
– 庭の手入れ・掃除など日常の動作を意識的に行う

「今日も体を動かした」という事実の積み重ねが、体の機能を維持します。完璧なプログラムより、毎日続けられる小さな習慣の方が長期的には価値があります。

定期健診を受ける

フレイル・サルコペニア・ロコモは、初期段階では自覚しにくいことをこのシリーズを通じてお伝えしてきました。だからこそ、定期的な健診で客観的に体の状態を把握することが重要です。

健診で確認したい項目として以下が挙げられます。

– 体重の変化:意図しない体重減少はフレイルのサインの一つ
– 握力:サルコペニアの簡易的な指標
– 歩行速度:移動機能の低下を早期に把握できる
– 血液検査:低栄養・貧血・炎症の状態を把握する

「異常がないか確認する」だけでなく、「昨年と比べてどう変化しているか」という視点で健診の結果を見ることが大切です。変化の傾向に気づくことが、早期対策につながります。

薬剤師として伝えたいこと

フレイル・サルコペニア・ロコモの予防は、薬だけでは完結しません。睡眠・社会参加・趣味・運動・定期健診という生活習慣全体が、健康寿命を支えています。

一方で、複数の薬を服用している方は、薬が生活習慣に影響していることがあります。睡眠の質に影響する薬・食欲を低下させる薬・活動意欲を低下させる薬。こういった影響がないかを定期的に確認することも、健康寿命を守る上で重要です。

薬・運動・栄養・睡眠・社会参加。これらを組み合わせることが、健康寿命を延ばす現実的なアプローチです。

まとめ

健康寿命を守る生活習慣の5つの柱は以下の通りです。

– よく寝る:筋肉の修復と体の回復を支える
– 人と話す:社会的フレイルを防ぎ食欲・意欲を維持する
– 趣味を持つ:意欲・活動量・社会参加を同時に支える
– 定期的に体を動かす:日常の中に運動を組み込む
– 定期健診を受ける:変化を早期に把握し対策につなげる

栄養・運動に加えてこれら5つの習慣を整えることが、フレイル・サルコペニア・ロコモ予防の生活習慣面からのアプローチです。

健康寿命は、生活全体で決まります。

次回(第10回・最終回)は「健康寿命を守るために一番大切なこと」を解説します。

健康寿命・生活習慣についてご不明な点はお気軽にご相談ください。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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