2026/07/24

高尿酸血症・痛風とは何か ——「風が吹いても痛い」その正体と 放置してはいけない理由 【病気を知る・生活習慣病編・第4回】

 

はじめに

「痛風って、お酒をよく飲む人がなる病気でしょ」「足の親指が突然腫れて激痛になる、あの病気?」。痛風はイメージとして知られていても、その仕組みを正確に理解している方は少ないかもしれません。

そして見落とされがちなのが、痛風発作が起きる前段階の「高尿酸血症」です。自覚症状がないからこそ、放置されやすい状態です。第4回は、高尿酸血症・痛風の仕組みを正しく理解することを目的に整理します。

高尿酸血症・痛風とは?

尿酸とは、体内でプリン体という物質が分解されたときにできる老廃物です。プリン体は食事から摂取されるほか、体内でも産生されます。尿酸は通常、血液に溶けて腎臓から尿として排泄されますが、産生量が多すぎる・排泄量が少ないという状態が続くと、血液中の尿酸値が上昇します。

血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を「高尿酸血症」といいます。この段階では自覚症状がないことがほとんどです。

高尿酸血症が続くと、尿酸塩結晶が関節に沈着し、免疫反応によって急性の強い炎症が起こります。急激な関節の腫れ・熱感・激痛が生じる、これが「痛風発作」です。「風が吹いても痛い」という表現が病名の由来とも言われるほど、激烈な痛みが特徴です。

体の中で何が起こっている?

尿酸値が高い状態が続くと、尿酸塩結晶が関節周囲の組織に少しずつ蓄積していきます。体温が低くなりやすい足の親指の付け根・足首・膝などの関節に蓄積しやすいとされています。

痛風発作は、ある日突然に始まります。蓄積した結晶が何らかのきっかけ(急激な尿酸値の変動・脱水・過度の飲酒など)で関節内に剥がれ落ちると、免疫細胞(白血球)がそれを異物として認識し攻撃します。この免疫反応による炎症が、痛風発作の激痛の原因です。

発作は1週間前後で改善することが多いですが、2週間程度続くこともあります。高尿酸血症が続く限り発作は繰り返され、繰り返すうちに関節・腎臓・血管へのダメージが蓄積していきます。

なぜ起こる?

尿酸値が上昇する原因は、大きく「産生過剰」と「排泄低下」に分けられます。

産生過剰に関わる主な要因

プリン体を多く含む食品の過剰摂取(レバー・魚卵・干物・一部の魚介類など)、アルコールの過剰摂取(アルコール自体が尿酸の産生を増やし、排泄も低下させる作用がある)、肥満。

排泄低下に関わる主な要因

遺伝的体質(排泄低下型が多いとされる)、脱水、腎機能の低下、一部の薬剤(利尿薬など)。

なお、急激な運動そのものが直接の原因というより、運動による脱水や急激な体への負荷が発作の誘因になることがあります。また「ビールをやめれば大丈夫」という単純な話ではなく、アルコール全般・肥満・脱水・遺伝的体質が複合的に関与しています。生活習慣全体を見直すことが重要です。

放置するとどうなる?

高尿酸血症・痛風を放置すると、以下のような影響が生じます。

痛風発作の繰り返し
発作は一度起きると再発しやすくなります。繰り返すたびに関節へのダメージが蓄積し、慢性的な関節変形につながることがあります。

痛風結節
皮膚の下に尿酸塩結晶の塊(痛風結節)が形成されることがあります。手足の関節周囲・耳などに現れます。

腎臓への影響・尿路結石
尿酸値が高い状態が続くと腎機能が低下するリスクがあります。また尿路結石のリスクも高まります。

高血圧・慢性腎臓病・動脈硬化との関連
高尿酸血症は高血圧・慢性腎臓病・動脈硬化と深く関連することが知られています。痛風発作がなくても、高尿酸血症の状態そのものが健康寿命に影響します。この点は特に見落とされやすいため、強調したいポイントです。

よくある誤解

❌「痛風発作が治まったから、もう大丈夫」

✅ 発作が治まっても、高尿酸血症は続いています

痛風発作の痛みは改善しても、血液中の尿酸値が高い状態は続いています。発作が落ち着いても高尿酸血症が続く限り、再発や腎障害のリスクは残ります。「痛みがない=問題がない」ではなく、尿酸値のコントロールを継続することが重要です。

薬剤師からのポイント

痛風発作が起きたとき、「尿酸値を下げる薬をすぐに飲めばいい」と自己判断する方がいます。しかし発作中の薬の扱いはケースによって異なり、自己判断での開始・中止は避けることが重要です。発作中の対処と、発作が落ち着いた後の尿酸値管理は目的・タイミングが異なります。

また尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)を服用している方は、自己判断で中止しないことが大切です。薬を急に中止すると尿酸値が変動し発作を誘発する可能性があります。薬の開始・中止は必ず処方医と相談した上で判断することが重要です。

薬と生活習慣(十分な水分摂取・アルコール管理・体重管理・食事の見直し)を組み合わせることが、高尿酸血症・痛風と向き合う正しいアプローチです。

今日のまとめ

– 高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態。自覚症状がないことが多い
– 尿酸塩結晶が関節に沈着し、免疫反応による急性の炎症が起きることで痛風発作が生じる
– 原因は食事だけでなく、アルコール・肥満・脱水・遺伝的体質が複合的に関与する
– 発作が治まっても高尿酸血症は続いており、腎障害・心血管リスクが蓄積し続ける
– 薬の開始・中止は自己判断せず、処方医と相談することが重要
– 薬と生活習慣を組み合わせることが正しいアプローチ

病気を知ることは、自分の体を知ること。
正しい知識は、健康寿命を守る第一歩です。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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