2026/07/26

骨粗しょう症とは何か ——骨は見えないところで 静かに変わっていく 【病気を知る・生活習慣病編・第6回・最終回】

はじめに

「骨粗しょう症って、お年寄りの病気でしょ」「骨が弱くなるのは仕方ない」。こういう認識のまま、対処が遅れてしまうケースが多くあります。

骨粗しょう症は、自覚症状がないまま骨がもろくなり、ある日突然の骨折をきっかけに日常生活が一変することがある病気です。最終回は、骨粗しょう症の仕組みを正しく理解することを目的に整理します。

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症とは、骨の量(骨密度)が低下し、骨の内部がスカスカになることで骨折しやすくなった状態を指します。骨密度が若い成人の平均値(YAM)の70%未満に低下した場合、または70〜80%の範囲でも骨折がある場合に骨粗しょう症と診断されます。

日本の骨粗しょう症患者数は約1300万人と推計されており(推計値)、そのうち約80%が女性とされています。特に閉経後の女性に多く見られますが、高齢男性や生活習慣・薬剤の影響によって男性にも起こります。

このシリーズで取り上げてきた生活習慣病の多くが骨粗しょう症のリスク因子と関連しており、生活習慣全体の問題として捉えることが重要です。

体の中で何が起こっている?

骨は一度作られたら変わらない固定したものではありません。古い骨を壊す「骨吸収」と新しい骨を作る「骨形成」が常に繰り返されており、この働きを「骨のリモデリング」と呼びます。健康な状態ではこの2つのバランスが保たれています。

骨粗しょう症では、このバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回る状態が続きます。結果として骨の量が減り、骨の内部がスポンジのように粗くなっていきます。

骨密度は成長期に増加し、20〜30代でピークを迎えます。その後は加齢とともに徐々に低下しますが、女性は閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで骨吸収が加速し、骨密度が急速に低下します。これが閉経後の女性に骨粗しょう症が多い主な理由です。一方男性は比較的緩やかに低下しますが、高齢になると男性も無視できない病気です。

なぜ起こる?

骨粗しょう症に関わる主なリスク要因として以下が挙げられます。

– 加齢:骨密度は加齢とともに自然に低下する
– 女性・閉経:エストロゲンの減少が骨吸収を加速させる
– カルシウム・ビタミンD不足:骨の材料と吸収を助ける栄養素の不足
– 運動不足:骨への物理的な負荷が少ないと骨形成が低下する
– 日照不足:ビタミンDの体内合成が減少する
– 喫煙・過度の飲酒:骨密度の低下と関連する
– 家族歴:親や祖父母に骨粗しょう症・骨折の既往がある場合はリスクが高い
– 薬剤の影響:ステロイド薬の長期使用は骨密度低下の重要な原因の一つ

また糖尿病・慢性腎臓病(CKD)も骨粗しょう症のリスクを高める疾患として知られており、このシリーズで取り上げてきた生活習慣病との深い関連が見えてきます。

放置するとどうなる?

骨粗しょう症の最大のリスクは「骨折」です。骨がもろくなることで、軽微な転倒・日常動作でも骨折しやすくなります。特に問題となる骨折として以下が挙げられます。

椎体骨折(背骨の骨折)
腰痛・背中の痛みとして現れます。重症化すると身長が縮む・背中が丸くなるといった変形が生じます。転倒しなくても、くしゃみや日常動作で起きることがあります。

大腿骨近位部骨折(太ももの付け根の骨折)
転倒によって起きることが多く、入院・手術が必要になるケースがほとんどです。骨折後に寝たきり・要介護状態に移行するリスクが高く、生命予後にも影響するとされています。

橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
転倒時に手をついたときに起きやすい骨折です。

骨折→入院→活動量の低下→筋力が落ちる→転びやすくなる→再骨折、という負のループが生じやすく、健康寿命への影響が非常に大きい病気です。このシリーズの健康寿命編でお伝えしたフレイル・サルコペニア・ロコモとも深くつながっています。

よくある誤解

❌「骨粗しょう症は骨が痛くなる病気」

✅ 骨粗しょう症自体には自覚症状がほとんどありません

「骨がもろくなっているなら、骨が痛いはず」と思っている方がいます。しかし骨粗しょう症は骨密度が低下していても痛みが出ないことがほとんどです。自覚症状が現れるのは、多くの場合「骨折したとき」です。

「痛みがないから大丈夫」ではなく、定期的な骨密度検査によって自分の骨の状態を数値で把握することが重要な理由がここにあります。40〜50代からの骨密度検査が、早期発見の重要な手段です。

薬剤師からのポイント

薬剤師として特に伝えたいのは、ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)の長期使用と骨粗しょう症の関係です。ステロイド薬は関節リウマチ・喘息・膠原病など多くの疾患に使用される重要な薬ですが、長期使用によって骨吸収を促進し・骨形成を抑制する作用があり、骨密度が低下するリスクがあります。これを「ステロイド性骨粗しょう症」と呼びます。

ステロイド薬を長期服用している方は、骨密度の定期的なチェックと、必要に応じた骨粗しょう症の予防・治療薬の使用について処方医と相談することが重要です。

また骨粗しょう症の治療薬(ビスホスホネート製剤など)を服用している方は、服用方法の遵守が特に重要です。起床後すぐに水で飲む・飲んだ後30分は横にならないなど、薬剤によって厳守すべき服用方法があります。正しい服用方法でなければ薬の効果が十分に得られない場合や、食道への副作用が生じる可能性があります。服薬に不安がある場合は処方医に確認してください。

薬と栄養(カルシウム・ビタミンD)・運動(骨への適度な負荷)を組み合わせることが、骨粗しょう症と向き合う正しいアプローチです。

今日のまとめ

– 骨粗しょう症とは、骨密度が低下して骨折しやすくなった状態
– 骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、特に閉経後の女性で急速に進行しやすい
– 自覚症状がないまま進行し、骨折して初めて気づくケースが多い
– 椎体・大腿骨・手首の骨折が代表的で、大腿骨骨折は要介護移行リスクが高い
– ステロイド薬の長期使用は骨密度低下の重要な原因の一つ。服用中の方は定期確認を
– 骨密度検査・薬・栄養・運動を組み合わせた対策が健康寿命を守る

病気を知ることは、自分の体を知ること。
正しい知識は、健康寿命を守る第一歩です。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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