はじめに
「血糖値が高めと言われたけど、甘いものをそんなに食べていないのに」「食後に測ると高くなるのは普通じゃないの?」。血糖値は食事と深く関係するため、「いつ測るか」によって数値が大きく変わります。
第6回は「血糖値」という検査項目を、薬剤師の視点から読み解きます。
この項目は何を見ている?
血糖値とは、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。食事をすると消化・吸収を経てブドウ糖が血液中に入り、血糖値が上昇します。その後、膵臓からインスリンが分泌されて血糖を筋肉・脂肪・肝臓などの細胞に取り込むことで、血糖値は一定の範囲に戻ります。
食後に血糖値が上がること自体は正常な反応です。問題になるのは、この血糖値が高いまま下がりにくい状態が続くことです。インスリンの分泌が不十分だったり、細胞がインスリンに反応しにくくなっていたりすると、血糖値が高い状態が続き、血管・神経にダメージが蓄積していきます。
健康診断では一般的に「空腹時血糖値」を測定します。前日夜から食事を取らない状態で採血することで、食事の影響を除いた「素の血糖値」を把握できます。この数値が、インスリンの機能が正常かどうかを判断する基本的な指標となります。
基準値は?
空腹時血糖値の分類は以下の通りです。
– 正常域:100mg/dL未満
– 正常高値:100〜109mg/dL
– 境界型(糖尿病予備群):110〜125mg/dL
– 糖尿病型:126mg/dL以上
ただし血糖値の単回測定だけで「糖尿病」と診断するわけではありません。実際の診断は血糖値・HbA1c・症状の有無・再検査の結果などを組み合わせて総合的に行われます。
「正常高値」や「境界型」は、将来的に糖尿病に移行するリスクがある状態です。「まだ糖尿病ではない」という安心感より、「早めに生活習慣を見直すサイン」として受け取ることが重要です。この段階での対策が、将来の合併症予防につながります。
高い(低い)と何が考えられる?
空腹時血糖値が高い場合に考えられる主な原因として以下が挙げられます。
インスリン機能の低下
インスリン分泌の低下(膵臓の機能低下)やインスリン抵抗性の増大(細胞がインスリンに反応しにくくなった状態)が主な背景です。2型糖尿病の進行と深く関連します。
生活習慣の影響
肥満(特に内臓脂肪の蓄積)・運動不足・過食・糖質の過剰摂取・睡眠不足・慢性的なストレスが血糖値の上昇と関連します。
薬剤・疾患の影響
ステロイド薬など一部の薬剤が血糖値を上昇させることがあります。甲状腺疾患・膵臓の疾患なども影響することがあります。
血糖値が低い場合(低血糖)は、インスリンや一部の糖尿病治療薬の影響で起きることがあります。めまい・冷や汗・動悸・意識の低下などの症状が現れることがあり、重症化すると意識を失う場合もあります。糖尿病治療中の方は低血糖への備えが重要です。
関係する病気
血糖値と深く関わる病気として以下が挙げられます。
2型糖尿病
病気を知る【生活習慣病編】第3回で詳しく解説しています。血糖値の慢性的な高値が、全身の血管・神経にダメージを与えます。
糖尿病三大合併症
網膜症・腎症・神経障害。血糖コントロールが不十分な期間が長いほどリスクが高まります。
心筋梗塞・脳梗塞
高血糖が動脈硬化を促進し、心血管疾患リスクを高めます。
メタボリックシンドローム
血糖の異常は内臓脂肪蓄積・血圧上昇・脂質異常と重なりやすく、心血管リスクが複合的に高まります。
膵臓疾患
膵炎・膵がんなどによって血糖値が異常値を示すことがあります。
よくある誤解
❌「空腹時血糖値が正常なら、食後の血糖値は気にしなくていい」
↓
✅ 空腹時が正常でも、食後に血糖値が急激に上昇する「食後高血糖」が隠れている場合があります
健康診断では空腹時血糖値を測定しますが、食後の血糖値とは別の話です。空腹時は正常範囲でも、食後に血糖値が急激に上昇・下降を繰り返す状態(血糖スパイク)は、動脈硬化リスクとの関連が指摘されています。
次回解説するHbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖の平均を反映するため、空腹時血糖値とHbA1cをセットで確認することが重要です。
薬剤師からのポイント
血糖値に影響を与える薬として、ステロイド薬が代表的です。ステロイド薬は血糖値を上昇させる作用があるため、長期使用している方では「ステロイド糖尿病」が生じることがあります。健診で血糖値が高めになっている方は、服薬中の薬との関係を確認することが大切です。
また血糖を下げる薬(インスリン・経口血糖降下薬)を服用している方は、低血糖への備えが重要です。薬の種類によって低血糖リスクが大きく異なるため、自分が服用している薬の特性を理解しておくことが大切です。
シックデイ(発熱・下痢・嘔吐などで食事が取れない日)は血糖値が不安定になりやすい時期です。服薬をどうするかについて、処方医に事前に確認しておくことをお勧めします。
「血糖値が少し高いだけだから大丈夫」ではなく、正常高値・境界型の段階から生活習慣の見直しに取り組むことが、将来の合併症予防につながります。
今日のまとめ
– 血糖値は血液中のブドウ糖の濃度。食後に上昇するのは正常な反応
– 空腹時126mg/dL以上が糖尿病型の目安だが、診断は複数の検査を組み合わせて総合的に行われる
– 正常高値・境界型の段階は「早めに生活習慣を見直すサイン」として受け取ることが重要
– 空腹時が正常でも食後高血糖が隠れている場合がある。HbA1cとセットで評価することが有用
– ステロイド薬など一部の薬剤が血糖値を上昇させることがある
– 糖尿病治療中の方は低血糖への備えとシックデイ対応を処方医と確認しておく
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健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。
自分の体の変化に気づき、健康寿命を守るための大切なヒントです。
Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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