2026/08/09

HbA1c ——過去1〜2ヶ月の血糖の「通知表」を 正しく理解する 【健康診断を読み解くシリーズ・第7回】

はじめに

「HbA1cって何のこと?」「血糖値と何が違うの?」。健康診断でHbA1cの数値が出ても、血糖値との違いがわからないという方が多くいます。

前回解説した血糖値は「測定したその瞬間」の値ですが、HbA1cは「過去1〜2ヶ月の血糖の平均的な状態」を反映します。この違いが、HbA1cが健康診断で重要視される理由です。第7回は「HbA1c」という検査項目を、薬剤師の視点から読み解きます。

この項目は何を見ている?

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは、赤血球の中にあるヘモグロビンというたんぱく質にブドウ糖が結合した割合を示す数値です。

血液中のブドウ糖は、赤血球のヘモグロビンと結合する性質があります。血糖値が高い状態が続くほど、この結合の割合が増えます。赤血球の寿命は約120日(4ヶ月)ですが、HbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖の平均的な状態を反映するとされています。

血糖値は食事・運動・ストレスなどによって1日の中でも大きく変動します。一方HbA1cは短期的な変動の影響を受けにくいため、より安定した血糖コントロールの指標として活用されています。

血糖値は「今この瞬間」、HbA1cは「最近の傾向」を示すイメージです。両方をセットで確認することで、血糖の状態をより正確に把握できます。

基準値は?

HbA1cの分類は以下の通りです。

– 正常域:5.5%以下
– 要注意域:5.6〜6.4%(糖尿病予備群の可能性)
– 糖尿病型:6.5%以上

ただし健診機関・ガイドラインによって区分の表現に違いがある場合があります。また6.5%以上であっても、血糖値など他の検査結果と合わせて総合的に診断されます。単独の数値だけで「糖尿病確定」と判断するわけではありません。

糖尿病と診断されすでに治療中の方では、合併症予防の観点からHbA1c7.0%未満を目標とすることが多いですが、年齢・合併症の有無・治療内容によって個別に目標値が設定されます。高齢の方では低血糖リスクを考慮してより緩やかな目標が設定されることがあります。

高いと何が考えられる?

HbA1cが高い場合に考えられる主な背景として以下が挙げられます。

慢性的な高血糖の継続
日常的に血糖値が高い状態が続いていることを示します。2型糖尿病の進行・コントロール不良が背景にあることが多いです。

生活習慣の影響
肥満・運動不足・過食・睡眠不足・慢性的なストレスが血糖値を継続的に上昇させることで、HbA1cが高くなります。

薬剤の影響
ステロイド薬など一部の薬剤が血糖値を上昇させることで、HbA1cが高くなることがあります。

一方でHbA1cの数値に影響を与える要因として、貧血(赤血球数の減少)・溶血性疾患・鉄欠乏などがあります。これらの状態では実際の血糖コントロールよりHbA1cが低く出ることがあります。逆に鉄欠乏性貧血の治療後などでは高く出ることがあります。数値の解釈は体の状態全体を踏まえて行うことが重要です。

関係する病気

HbA1cと深く関わる病気として以下が挙げられます。

2型糖尿病
病気を知る【生活習慣病編】第3回で詳しく解説しています。HbA1cは糖尿病の診断基準の一つであり、治療経過の管理指標として広く使われています。

糖尿病三大合併症
網膜症・腎症・神経障害はいずれも、HbA1cが高い状態が長く続くほどリスクが高まります。HbA1cの長期的な管理が合併症予防の鍵です。

心筋梗塞・脳梗塞
高血糖が動脈硬化を促進し、心血管疾患リスクを高めます。

慢性腎臓病(CKD)
病気を知る【生活習慣病編】第5回で解説しています。糖尿病性腎症は透析原因疾患の第1位です。

よくある誤解

❌「健診前日だけ食事を控えれば、HbA1cの数値は下がる」

✅ HbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖の平均を反映するため、直前の食事制限では変わりません

血糖値は空腹にすれば一時的に下げられますが、HbA1cは赤血球にブドウ糖が結合した累積の割合です。健診前日だけ食事を控えても、過去1〜2ヶ月の血糖の状態が反映されるため数値は変わりません。

逆に言えば、HbA1cは直前の状態に左右されない安定した指標です。「健診のために一時的に頑張る」ではなく、日頃の生活習慣が正直に反映される数値です。

薬剤師からのポイント

糖尿病の治療中の方がHbA1cを下げるために血糖を下げる薬を増量・追加した場合、低血糖のリスクが高まります。特に高齢の方では低血糖が転倒・骨折・認知機能低下など深刻な問題につながることがあります。

高齢の方ではHbA1cの目標値を厳格にしすぎず、低血糖リスクを避けることが優先されるケースがあります。「HbA1cが低いほどいい」ではなく、年齢・体の状態・生活環境に合わせた個別の管理が重要です。担当医と目標値の意味を確認し合うことをお勧めします。

また貧血がある方・鉄剤を服用している方・溶血性疾患がある方では、HbA1cが実際の血糖コントロールを正確に反映しないことがあります。該当する方は処方医に確認しておくことが大切です。

今日のまとめ

– HbA1cはヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合を示し、過去1〜2ヶ月の血糖の平均を反映する
– 6.5%以上が糖尿病型の目安。ただし診断は血糖値など他の検査と合わせて総合的に行われる
– 直前の食事制限では数値は変わらない。日頃の生活習慣が正直に反映される指標
– 貧血・鉄欠乏がある場合はHbA1cの数値が実態を正確に反映しないことがある
– 高齢の方では「HbA1cを低くしすぎない」ことも重要。低血糖リスクを避けることが優先される場合がある
– 血糖値とHbA1cはセットで確認することで、血糖の状態をより正確に把握できる

健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。
自分の体の変化に気づき、健康寿命を守るための大切なヒントです。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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