はじめに
「尿酸値が高いと言われたけど、痛風になっていないから大丈夫かな」「ビールを控えればいいんでしょ?」。健康診断で尿酸値が高めでも、症状がないと放置してしまうケースが多くあります。
しかし高尿酸血症は、痛風発作が起きる前から腎臓・血管にダメージを与え続ける状態です。第8回は「尿酸値」という検査項目を、薬剤師の視点から読み解きます。
この項目は何を見ている?
尿酸とは、細胞の核に含まれるプリン体という物質が体内で分解されたときにできる老廃物です。プリン体は食事から摂取されるほか、体内でも産生されます。
通常、尿酸は血液に溶けて腎臓から尿として排泄されます。しかし産生量が多すぎる・排泄量が少ないという状態が続くと、血液中の尿酸値が上昇します。
健康診断でこの数値を測定することで、高尿酸血症の有無を把握し、痛風発作・腎臓障害・心血管疾患のリスクを早期に確認することができます。尿酸値は「痛風があるかどうか」だけでなく、全身のリスクを把握する指標として重要です。
基準値は?
血清尿酸値の基準は以下の通りです。
– 基準値:7.0mg/dL以下
– 高尿酸血症:7.0mg/dLを超えた状態
男女差については、女性は一般的に男性より尿酸値が低い傾向があります。女性ホルモン(エストロゲン)が腎臓からの尿酸排泄を促進する働きがあるためです。閉経後はエストロゲンが減少するため、女性も尿酸値が上昇しやすくなります。
7.0mg/dLを超えても、必ずしもすぐに症状が現れるわけではありません。しかし高尿酸血症の状態が続くほど、尿酸塩結晶が関節・腎臓に蓄積するリスクが高まります。「症状がないから大丈夫」ではなく、数値の段階から対策を考えることが重要です。
高いと何が考えられる?
尿酸値が高い場合に考えられる主な原因として以下が挙げられます。
産生過剰に関わる要因
プリン体を多く含む食品の過剰摂取(レバー・魚卵・干物・一部の魚介類など)、アルコールの過剰摂取(アルコール自体が尿酸の産生を増やし排泄も低下させる作用がある)、肥満。
排泄低下に関わる要因
遺伝的体質(排泄低下型が多いとされる)、脱水、腎機能の低下、一部の薬剤(利尿薬など)。
なお急激な運動そのものが直接の原因ではなく、運動による脱水や急激な体への負荷が尿酸値の変動につながることがあります。「ビールをやめれば大丈夫」という単純な話ではなく、アルコール全般・肥満・脱水・遺伝的体質が複合的に関与しています。生活習慣全体を見直すことが重要です。
関係する病気
尿酸値と深く関わる病気として以下が挙げられます。
高尿酸血症・痛風
病気を知る【生活習慣病編】第4回で詳しく解説しています。尿酸塩結晶が関節に沈着し、免疫反応によって激しい炎症が起きることで痛風発作が生じます。
慢性腎臓病(CKD)
高尿酸血症が腎機能低下に関与することが知られています。病気を知る【生活習慣病編】第5回参照。
尿路結石
尿酸が尿路に結晶化して石を形成します。腰部・下腹部の激しい痛みとして現れることがあります。
高血圧・動脈硬化・心血管疾患
高尿酸血症との関連が報告されています。痛風発作がなくても高尿酸血症の状態そのものが、心血管リスクに影響することが知られています。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪蓄積・高血圧・高血糖・脂質異常と高尿酸血症は重なりやすい状態です。
よくある誤解
❌「痛風になっていないから、尿酸値が高くても大丈夫」
↓
✅ 高尿酸血症は痛風発作がなくても、腎臓・血管へのリスクが続いています
「痛風の発作が起きていないから問題ない」という方が多くいます。しかし高尿酸血症の状態が続くことで、腎機能の低下・尿路結石・心血管疾患リスクの上昇が静かに進行します。痛風発作は「高尿酸血症の氷山の一角」です。発作がないうちから尿酸値を管理することが、健康寿命を守ることにつながります。
薬剤師からのポイント
尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)には大きく2つのタイプがあります。尿酸の産生を抑えるタイプ(フェブキソスタット・アロプリノールなど)と、尿酸の排泄を促すタイプ(ベンズブロマロンなど)です。どちらが適しているかは、尿酸値が高くなっている原因(産生過剰型・排泄低下型)によって異なります。処方医による評価のもとで薬剤選択が行われます。
尿酸降下薬を服用中の方は、自己判断で中止しないことが重要です。薬をやめると尿酸値が元に戻り、尿酸値の急激な変動が痛風発作を誘発する可能性があります。薬の変更・中止は必ず処方医と相談した上で判断してください。
また服薬中の薬が尿酸値を上昇させているケースがあります。利尿薬(サイアザイド系・ループ利尿薬)は尿酸の排泄を低下させるため、尿酸値が上昇しやすくなります。健診で尿酸値が高くなってきた方は、服薬との関係を処方医に確認することをお勧めします。
今日のまとめ
– 尿酸値はプリン体が分解された老廃物(尿酸)の血中濃度を示す
– 7.0mg/dLを超えた状態が高尿酸血症。女性は閉経後に上昇しやすくなる
– 痛風発作がなくても、高尿酸血症は腎臓・血管へのリスクが続いている
– 原因は食事だけでなく、アルコール・肥満・脱水・遺伝的体質が複合的に関与する
– 尿酸降下薬は産生抑制型と排泄促進型の2タイプがあり、自己判断で中止しないことが重要
– 利尿薬など一部の薬が尿酸値を上昇させることがある。服薬状況を処方医に確認する
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健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。
自分の体の変化に気づき、健康寿命を守るための大切なヒントです。
Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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