2026/08/15

尿検査(尿たんぱく・尿糖・尿潜血) ——尿に現れる 体からのサインを正しく理解する 【健康診断を読み解くシリーズ・第12回】

はじめに

「尿たんぱくが+になっていたけど、何が問題なの?」「尿糖が出たと言われたけど、糖尿病なの?」。健康診断の尿検査で異常を指摘されても、何を意味するのかわからないという方が多くいます。

尿は体の中の余分なものをろ過して排泄したものです。本来は排泄されないはずのものが尿に含まれていたり、排泄量が異常だったりするとき、体の中で何かが起きているサインです。第12回は「尿検査(尿たんぱく・尿糖・尿潜血)」という検査項目を、薬剤師の視点から読み解きます。

この項目は何を見ている?

健康診断の尿検査では、主に以下の3つを確認します。

尿たんぱく

たんぱく質は通常、腎臓の糸球体でろ過されても細尿管で再吸収されるため、尿にはほとんど含まれません。腎臓の糸球体が傷つくと、たんぱく質がろ過されたまま再吸収されず尿に含まれるようになります。

尿たんぱくは腎臓の状態を反映する最も重要な指標の一つです。前回解説したeGFRとセットで評価することで、腎機能の状態をより正確に把握できます。

尿糖

血糖値が一定以上(おおむね170〜180mg/dL以上)になると、腎臓の再吸収能力を超えてブドウ糖が尿に漏れ出します。これが尿糖です。血糖値の異常を示すサインになりますが、血糖値が正常でも腎臓の再吸収能力によって尿糖が出ることがあります(腎性糖尿)。

尿潜血

尿の中に赤血球が含まれている状態です。肉眼で確認できる血尿(肉眼的血尿)だけでなく、顕微鏡で確認できる程度の微量な出血(顕微鏡的血尿)も尿潜血として検出されます。腎臓・膀胱・尿管・尿道など尿路のどこかで出血があることを示します。

基準値は?

健康診断では定性検査(定量ではなく程度を示す)で行われることが多く、結果は以下のように表記されます。

– 陰性(−):異常なし
– 偽陰性(±):要注意・再検査を検討
– 陽性(+〜+++):異常あり

尿たんぱく・尿糖・尿潜血いずれも、陰性(−)が正常です。

ただし一時的な陽性が出ることもあります。激しい運動後・発熱時・脱水時・立位が長く続いた後(起立性たんぱく尿)・女性の月経中などでは、異常がなくても一時的に陽性になることがあります。1回の検査結果だけで判断せず、再検査や医療機関での精密検査が重要です。

異常があると何が考えられる?

尿たんぱくが陽性の場合

腎臓の糸球体が傷ついている可能性があります。慢性腎臓病(CKD)・糖尿病性腎症・高血圧性腎硬化症・慢性糸球体腎炎・IgA腎症などが背景にある場合があります。

eGFRと合わせた評価が特に重要です。eGFRが60以上でも尿たんぱくが続く場合はCKDと診断されることがあります。尿たんぱくとeGFRは必ずセットで確認してください。

尿糖が陽性の場合

血糖値が高い状態(糖尿病・糖尿病予備群)が最もよく考えられる原因です。ただし腎性糖尿(血糖値は正常でも腎臓の再吸収能力が低い状態)の場合は、血糖値が正常でも尿糖が出ます。

尿糖が出た場合は、血糖値・HbA1cと合わせた評価が必要です。自己判断で「糖尿病だ」と決めつけず、医療機関での確認が重要です。

尿潜血が陽性の場合

腎臓・膀胱・尿管・尿道のいずれかで出血が起きている可能性があります。原因として以下が考えられます。

尿路結石・膀胱炎・腎盂腎炎・腎炎(IgA腎症など)・腎がん・膀胱がん・前立腺がん(男性)。

女性の場合は月経の影響で偽陽性になることがあります。月経期間を避けて再検査することが重要です。

尿潜血は特に、症状がなくても腎がん・膀胱がんの早期発見のきっかけになることがあります。陽性が続く場合は、泌尿器科・内科での精密検査を受けることをお勧めします。

関係する病気

尿検査と深く関わる病気として以下が挙げられます。

尿たんぱくに関連する病気
慢性腎臓病(CKD)・糖尿病性腎症・高血圧性腎硬化症・慢性糸球体腎炎・IgA腎症。病気を知る【生活習慣病編】第5回参照。

尿糖に関連する病気
2型糖尿病・腎性糖尿。病気を知る【生活習慣病編】第3回参照。

尿潜血に関連する病気
尿路結石・膀胱炎・腎盂腎炎・腎炎・IgA腎症・腎がん・膀胱がん・前立腺がん。

よくある誤解

❌「尿潜血が出たけど、痛みがないから大丈夫」

✅ 尿潜血は痛みがなくても腎がん・膀胱がんの初期サインである場合があります

「血尿が出ても痛みがないから大丈夫」と思っている方がいますが、腎がん・膀胱がんは初期段階では痛みがなく、尿潜血だけが唯一のサインであることがあります。痛みの有無に関わらず、尿潜血が繰り返し陽性になる場合は泌尿器科・内科での精密検査を受けることが重要です。

薬剤師からのポイント

服薬中の薬・サプリメントが尿検査の結果に影響することがあります。

ビタミンC(アスコルビン酸)を多量に摂取していると、尿潜血・尿糖の検査が偽陰性になることがあります。ビタミンCのサプリメントを服用している方は、健診前の大量摂取に注意が必要です。

また一部の薬剤は尿の色を変えることがあります(リファンピシンで橙赤色・一部のビタミン剤で黄色・メトロニダゾールで赤褐色など)。服薬中の薬がある場合は、健診時に申告しておくことをお勧めします。

尿検査で異常が見つかった場合は、自己判断だけで対処せず医療機関への相談を検討してください。特に尿たんぱく・尿潜血が繰り返し陽性になる場合は、早めの精密検査が健康寿命を守る上で重要です。

今日のまとめ

– 尿たんぱくは腎臓の糸球体の傷つきを示す。eGFRとセットで腎機能を評価することが重要
– 尿糖は血糖値の異常を示すことが多い。血糖値・HbA1cと合わせた評価が必要
– 尿潜血は痛みがなくても腎がん・膀胱がんの初期サインである場合がある。陽性が続く場合は精密検査を
– 月経中・激しい運動後・発熱時は一時的に陽性になることがある。1回の結果だけで判断しない
– ビタミンCの大量摂取が尿検査の結果に影響することがある。健診前の大量摂取に注意
– 尿検査はクレアチニン・eGFR・血糖値・HbA1cとセットで評価することで意味が深まる

健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。
自分の体の変化に気づき、健康寿命を守るための大切なヒントです。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

インスタグラム LINE note

©2023 TSUNAGARUCRAFT