熱中症は予防をすることで発生率を下げることができます。
今回はそんな内容をお伝えできたらと思います。
1. 水分補給だけで熱中症は防げるのか
「熱中症対策=こまめな水分補給」というイメージは広く浸透しています。しかし実際には、水だけを飲み続けていても熱中症を防ぎきれないケースがあります。それは、汗と一緒に失われているのが水分だけではないからです。
2. 汗と一緒に失われる塩分・ミネラル
大量に発汗すると、体内の水分に加えて、ナトリウムをはじめとする塩分・ミネラルも同時に失われます。ここで水分だけを補給すると、血液中の塩分濃度が相対的に薄まり、頭痛・めまい・倦怠感といった症状が出やすくなることがあります。厚生労働省の「職場における熱中症予防対策マニュアル」でも、熱中症リスクのある日には0.1〜0.2%程度の食塩水や、ナトリウムを含むスポーツドリンク・経口補水液を、20〜30分ごとにコップ1〜2杯程度摂取することが望ましいとされています。
補給のタイミングも重要です。喉の渇きは、すでに軽い脱水が始まっているサインとされています。喉が渇いてから飲むのではなく、暑い環境に入る前・作業や運動の前から、少しずつ補給しておくことが基本的な考え方です。
3. もう一つの視点 ― 飲み物の「温度」
塩分・ミネラルと並んで意識したいのが、飲み物の温度です。
熱中症は、体内に熱がこもり、体温調節が追いつかなくなることで起こります。そのため予防・対策の柱の一つは、「深部体温を上げすぎない」「上がってしまったら早く下げる」ことにあります。
5〜15℃程度の冷たい飲み物には、深部体温を低下させる作用があるとされています。加えて、冷たい飲み物は胃にとどまる時間が短く、比較的速やかに吸収されるという特徴もあります。そのため、運動や作業などで体内の熱産生が多い状況、大量に汗をかいている状況では、常温の水よりも冷たい飲み物のほうが対策として適していると考えられています。
一方で、冷たい飲み物を一度に大量に摂取すると、胃腸への刺激や負担になる場合もあります。あくまで「こまめに、少しずつ」が原則である点は変わりません。
4. よくある誤解
❌ 水さえたくさん飲んでいれば熱中症は防げる
↓
✅ 水分・塩分・ミネラルをあわせて補給することで、初めて予防効果が高まる
❌ 冷たい飲み物は体に悪いので常温がよい
↓
✅ 体温が上がっている場面では、冷たい飲み物のほうが深部体温を下げやすい
5. 薬剤師からのポイント
降圧利尿薬を服用している方や、腎機能に制限があり塩分摂取に制約がある方は、水分・塩分の摂り方について自己判断せず、かかりつけの医師・薬剤師に相談しながら調整することをおすすめします。持病や服薬状況によって、適切な水分・塩分量は一人ひとり異なります。
6. 今日のまとめ
熱中症予防の水分補給には、「水分」「塩分・ミネラル」「温度」という3つの視点があります。すべてを完璧に管理する必要はありません。まずは今日、塩分も一緒に摂れているか、冷たい飲み物を選べているかを振り返るところから始めてみてください。
Well Lab / 筋肉薬剤師 北川俊一
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