2026/09/05

高血圧と生活習慣 ——数値を「日常で整える」ことの意味 【生活習慣病を予防・改善するシリーズ・第7回】

 

はじめに

「血圧の薬を飲んでいるから、食事は関係ないよね」「少し高いと言われたけど、症状はないから様子を見ている」。高血圧と生活習慣の関係は、薬を飲んでいる方も・まだ飲んでいない方も、どちらにとっても重要な話です。

第7回は「高血圧と生活習慣」の関係を整理します。このシリーズの第1〜6回で取り上げた食事・運動・睡眠・体重・飲酒・喫煙が、高血圧という疾患とどう関わるのかをまとめます。

高血圧と生活習慣は、どう関係する?

高血圧の発症・悪化には、遺伝・加齢・体質などの変えられない要因と、食事・運動・体重・飲酒・喫煙・睡眠などの生活習慣という変えられる要因が複合的に関与しています。

2025年8月に日本高血圧学会から「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」が公表されました。このガイドラインが特に強調しているのは「病院で下げる」だけでなく「日常で整える」という考え方です。生活習慣の改善は、高血圧の予防・管理において薬物療法と並ぶ重要な柱として位置づけられています。

なぜ生活習慣が関係するのか

食塩の過剰摂取
ナトリウムが体内の水分量を増やし、血圧を上昇させます。減塩は高血圧管理における生活習慣改善の中で最も強く推奨されているアプローチの一つです。研究では減塩によって5〜6mmHg程度の降圧効果が示されています。

体重の増加
内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を高め、血圧上昇と関連します。体重1kgの減量で血圧が約1mmHg低下するという研究結果も示されています(第4回参照)。

運動不足
有酸素運動は血管の柔軟性を高め、血圧を下げる方向に働きます。研究では有酸素運動によって収縮期血圧が5〜8mmHg程度低下する効果が示されています(第2回参照)。

飲酒
飲酒量が多いほど血圧が上昇しやすくなります。節酒によって4mmHg程度の降圧効果が示されています(第5回参照)。

喫煙
ニコチンによる血管収縮が血圧を上昇させます。また動脈硬化の促進が長期的に血圧・心血管リスクに影響します(第6回参照)。

睡眠不足
睡眠不足は夜間の血圧低下(夜間血圧降下)が起きにくくなることと関連し、高血圧リスクと関連することが示されています(第3回参照)。

これらの生活習慣は互いに独立して影響するだけでなく、組み合わさることで効果が高まります。複数の改善を組み合わせることで、10mmHg以上の降圧も可能とする研究もあります。

ガイドラインではどう考えられているか

JSH2025では、高血圧管理における生活習慣改善として以下が推奨されています。

減塩
食塩摂取量6g/日未満を目標とする。日本人の平均食塩摂取量は男性10.7g・女性9.1g(令和5年国民健康・栄養調査)と目標を大幅に上回っており、多くの方に改善の余地があります。

体重管理
肥満がある場合はBMI25未満を目標とした減量が推奨されています。

運動
中等度の有酸素運動を毎日30分以上または週180分以上行うことが目安とされています。

節酒
アルコール摂取量を男性20〜30mL/日以下・女性10〜20mL/日以下に制限することが推奨されています。

禁煙
血圧管理とは独立した心血管リスク低減のために推奨されています。

血圧の管理目標については、JSH2025では診察室血圧130/80mmHg未満・家庭血圧125/75mmHg未満が基本的な目標として示されました。これは以前のガイドライン(JSH2019:診察室140/90mmHg未満)より厳格化された目標値であり、より早い段階での血圧管理が脳・心臓の病気を防ぐ上で有効という研究を踏まえたものです。ただし高齢で日常生活動作に制限がある方などは個別に目標を設定します。

どんな影響と関係する?

生活習慣の改善が特に重要な状況として以下が挙げられます。

正常高値血圧・高値血圧の段階
まだ高血圧と診断されていないが数値が気になっている段階では、生活習慣の改善によって高血圧への移行を遅らせることが期待できます。この段階での対策が最も予防的意義を持ちます。

薬物療法との組み合わせ
降圧薬を服用している方も、生活習慣の改善によって薬の効果を最大限に引き出したり、必要な薬の量を減らせる場合があります。薬で数値がコントロールされている状態でも、生活習慣の土台が重要です。

合併症リスクの低減
脳梗塞・心筋梗塞・慢性腎臓病(CKD)など、高血圧の合併症リスクを下げる上でも、生活習慣の総合的な管理が重要です。

よくある誤解

❌「降圧薬を飲んでいれば、生活習慣は関係ない」

✅ 薬と生活習慣はどちらか一方ではなく、それぞれ役割があります

「薬を飲んでいるから大丈夫」と生活習慣を放置すると、薬の効果が十分に発揮されにくくなったり、必要な薬の量が増えたりすることがあります。生活習慣の改善は、薬物療法の効果を支える土台です。

逆に「生活習慣を変えれば薬はいらない」という考え方も、すべての方に当てはまるわけではありません。遺伝的体質・病気の進行度によっては薬が継続的に必要な方がいます。薬と生活習慣は対立するものではなく、それぞれに役割があります。

薬剤師からのポイント

降圧薬にはさまざまな種類があり、それぞれ作用機序・副作用・注意点が異なります。

一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬の一部)はグレープフルーツとの相互作用があります。運動後・入浴後・飲酒後などに血圧が過度に下がりすぎる(起立性低血圧)リスクがある薬もあります。特に高齢の方では過度な降圧が転倒・骨折のリスクにつながることがあるため、目標値の設定は個別に重要です。

NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェンなどの市販鎮痛薬)は降圧薬の効果を弱めることがあります。頭痛・腰痛などで市販薬を頻繁に使用している方は処方医に相談することをお勧めします。

家庭血圧の測定習慣を持つことが重要です。毎朝起床後・毎晩就寝前に同じ条件で測定し記録することで、日常の血圧の変化を把握できます。「病院では正常なのに家では高い(白衣高血圧の逆)」「病院では高いが家では正常(白衣高血圧)」という状況が、薬の調整に重要な情報になります。JSH2025では家庭血圧が診断・管理においてより重視されるようになっています。

今日のまとめ

– 高血圧の管理には「病院で下げる」だけでなく「日常で整える」生活習慣の改善が重要
– JSH2025の目標は診察室血圧130/80mmHg未満・家庭血圧125/75mmHg未満(個別に設定)
– 減塩・体重管理・有酸素運動・節酒・禁煙・睡眠改善がそれぞれ血圧に影響する
– 複数の生活習慣改善を組み合わせることで、より大きな降圧効果が期待できる
– 薬と生活習慣はそれぞれ役割分担。どちらか一方ではなく組み合わせることが重要
– 家庭血圧を毎日同じ条件で測定・記録する習慣が、自分の血圧を知る重要な手段

すべてを一度に変える必要はありません。まずは自分の血圧の状態と生活習慣を振り返り、できることから考えてみてください。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net
「薬を否定しない。でも薬だけに頼らない。」

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