はじめに
「運動しなければ」と思いながら、なかなか始められない。そういう方は多いと思います。でも「運動」という言葉のイメージが少し広がると、見方が変わることがあります。
第2回は「身体活動」と「運動」の違いを整理します。この違いを知ることで、健康のための活動の捉え方が変わるかもしれません。
身体活動とは?
身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴うすべての動きのことを指します(厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」)。
この定義で重要なのは「すべての動き」という部分です。スポーツや筋トレだけでなく、通勤での歩行・階段の上り下り・家事・庭仕事・買い物なども、すべて身体活動に含まれます。
一方、運動は身体活動の中の一部です。体力の維持・向上を目的として、計画的・意図的・継続的に行われる活動を「運動」と呼びます。ウォーキングのために外に出る・ジムでトレーニングする・ヨガクラスに通うといった活動がこれに当たります。
もう一つ「スポーツ」という概念もあります。競技や勝敗・記録を伴うもの・あるいはレクリエーションとして楽しむ活動がこれに当たり、運動の中に含まれます。
整理するとこうなる
身体活動(すべての動きを含む広い概念)のうち、意図的・計画的に行うものが「運動」であり、その中でも競技性・娯楽性を持つものが「スポーツ」です。
生活活動として、通勤・家事・買い物・仕事中の立ち作業などが身体活動に含まれます。運動として、ウォーキング・筋力トレーニング・水泳・ヨガなどの意図的な活動があります。スポーツとして、テニス・サッカー・水泳大会への参加などが挙げられます。
日常の「動き」全体が身体活動であり、運動はその一部です。「運動していない」と思っている方でも、通勤で15分歩いていたり、買い物袋を持って移動していたりすれば、それは身体活動として積み重なっています。
なぜこの違いが重要なのか
研究では、1日の身体活動量の合計が健康に影響することが示されています(身体活動・運動ガイド2023)。「運動の時間を作れない」という方でも、日常生活の中での活動量を増やすことが健康との関連で意味を持つということです。
またガイドラインでは「座りっぱなしの時間を減らすこと」自体にも独立した意味があることが示されています(第6回で詳しく扱います)。30分に一度立ち上がる・エレベーターより階段を使う・電話中に立って話すといった行動が、身体活動量の積み重ねになります。
「ジムに行かないと意味がない」「まとまった時間がないと運動できない」という考え方は、身体活動の捉え方が少し狭くなっているかもしれません。一方で「日常の動きだけで十分」とも言い切れません。意図的な運動にしかない効果(筋力向上・心肺機能の向上など)もあります。両方の視点が大切です。
メッツ(METs)という考え方
身体活動の強度を表す単位として「メッツ(METs:Metabolic Equivalents)」があります。安静時を1メッツとしたとき、その活動が何倍のエネルギーを消費するかを示す数値です。
普通歩行は約3メッツ・速歩きは約4メッツ・ジョギングは約7メッツとされています。家事(掃除機がけ)は約3〜3.5メッツ程度とされており、日常活動でも一定の強度があることがわかります。
ガイドラインでは3メッツ以上の身体活動を「中強度以上」として、健康への関連が特に示されています。この概念については第7回「どのくらい体を動かせばいい?」で詳しく扱います。
よくある誤解
❌「運動していないから、身体活動も不足している」
↓
✅ 日常の動き全体が身体活動。意図的な運動だけが健康に関わるわけではありません
ジムに行く・スポーツをするという「運動」をしていなくても、通勤・家事・買い物で体を動かしていれば、それは身体活動として積み重なっています。「運動ゼロ=身体活動ゼロ」ではないことを知っておくことが大切です。ただしもちろん、意図的な運動にしかない効果もあります。両方のバランスを考えることが重要です。
薬剤師・運動指導者として伝えたいこと
「運動しなければ」という義務感が、かえって行動を遠ざけることがあります。「ジムに行かなければ」ではなく「今日、自分はどのくらい体を動かしたか」を振り返ってみることが、行動の出発点になることがあります。
日常の身体活動量を知ることで、自分の生活のどこに「動ける余地があるか」が見えてきます。その余地をどう活かすかは、人それぞれです。
今日のまとめ
– 身体活動とは、骨格筋を使うすべての動きのこと。運動はその一部
– 通勤・家事・買い物なども身体活動に含まれる
– 日常の身体活動量の合計が健康に影響することが研究で示されている
– 「ジムに行けない=身体活動できない」ではない
– 意図的な運動にしかない効果もある。日常活動と運動の両方の視点が大切
– 次回は「有酸素運動とは?」を整理します
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net
「薬を否定しない。でも薬だけに頼らない。」
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