2026/09/20

筋力トレーニングとは? 【運動と健康シリーズ・第4回】

はじめに

「筋トレは若い人・アスリートがやるもの」「体を大きくしたいわけじゃないから必要ない」。筋力トレーニングに対してこういったイメージを持っている方は少なくありません。

第4回は「筋力トレーニング」について整理します。見た目や競技パフォーマンスのためだけでなく、健康という観点から筋力トレーニングを捉え直します。

筋力トレーニングとは?

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)とは、筋肉に抵抗(負荷)をかけることで、筋力・筋肉量・筋持久力を維持・向上させることを目的とした運動です。

「レジスタンス(resistance)」とは「抵抗」という意味で、筋肉が抵抗に逆らって収縮することからこの名前がついています。ダンベル・バーベルなどの器具を使うものだけでなく、自分の体重を負荷として使うスクワット・腕立て伏せ・腹筋なども筋力トレーニングに含まれます。またチューブ・マシンを使ったものも同様です。

有酸素運動が「比較的低い負荷で長く続ける運動」であるのに対し、筋力トレーニングは「比較的高い負荷で短時間に力を発揮する運動」です。エネルギー産生は主に無酸素系が使われますが、インターバルや回数・強度によっては有酸素系も関与します。

体の中で何が起きているか

筋力トレーニングで筋肉に負荷をかけると、筋線維に微細な損傷(マイクロダメージ)が生じます。これが回復する過程で筋肉が修復・再構築され、以前より強く・適応した状態になります。一般的に「超回復」と呼ばれるプロセスです。

筋たんぱく質の合成が促進されるこの回復期には、適切なたんぱく質摂取・十分な休養・睡眠が重要です。筋力トレーニングは「やった日」だけでなく、その後の回復期間を含めてセットで考える必要があります。

また筋力トレーニングは骨にも刺激を与えます。骨は適度な力学的負荷がかかることで骨密度の維持に関わることが示されており、荷重運動としての側面も持ちます(第13回で詳しく扱います)。

ホルモンへの影響としては、成長ホルモン・テストステロンなどの分泌が促進されることが研究で示されています。これらが筋肉の修復・代謝に関わります。

なぜ健康に関係するのか

筋力トレーニングの健康への影響は、筋肉量・筋力の維持を通じて多方面に及びます。

基礎代謝との関係
筋肉は安静時にもエネルギーを消費する組織です。筋肉量が多いほど基礎代謝量が高くなる傾向があり、体重管理とも関連します。ただし「筋トレすれば脂肪が直接燃える」という単純な話ではなく、筋肉量を維持することで加齢による代謝低下が緩やかになるという関係です。

血糖・インスリン感受性
筋肉はブドウ糖の最大の貯蔵・利用組織です。筋肉量が多いほど血糖を処理する能力が高まる方向に働き、インスリン感受性の改善と関連することが示されています(第11回で詳しく扱います)。

サルコペニア・フレイルの予防
加齢に伴い筋肉量・筋力は自然に低下します(サルコペニア)。この低下が進むと日常生活動作が困難になる・転倒しやすくなる・要介護状態につながりやすくなります。筋力トレーニングはこの低下速度を遅らせることに関わることが示されています(第16・18回で詳しく扱います)。

骨密度の維持
荷重・負荷をかける運動は骨への刺激となり、骨密度の維持に関わります(第13回参照)。

心血管リスク・死亡リスク
複数の研究で、筋力トレーニングの習慣が心血管疾患リスク・全死亡リスクの低下と関連することが報告されています。有酸素運動と組み合わせることで、より包括的な健康効果が期待できることが示されています。

どのくらいの負荷・頻度で行うか

健康づくりを目的とした筋力トレーニングの基本的な考え方として、主要な筋群(下肢・体幹・上肢)を対象に、週2〜3日行うことが厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で推奨されています。

負荷の目安として、10〜15回程度繰り返せる重さが基本とされていますが、体力・目的・健康状態によって異なります。「全力で1回しかできない重さ」のような高負荷は、健康づくりを目的とした場合には必須ではありません。

同じ筋群を毎日行うより、回復のための休息日を設けることが重要です。

よくある誤解

❌「筋トレは体を大きくしたい人がやるもの。健康目的には必要ない」

✅ 筋力トレーニングは筋力・筋肉量の維持を通じて、健康寿命に関わる運動です

健康づくりにおける筋力トレーニングの目的は「体を大きくすること」ではなく「筋力・筋肉量を維持すること」です。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも成人・高齢者に週2〜3日の筋力トレーニングが推奨されています。有酸素運動とは異なる役割を担う、健康づくりの重要な柱の一つです。

薬剤師・運動指導者として伝えたいこと

筋力トレーニングを始める際に注意したい点があります。

高血圧がある方は、力を入れる際に息を止めると血圧が急激に上昇することがあります(バルサルバ効果)。力を入れるときに息を吐く、または呼吸を止めないことが基本です。

骨粗しょう症がある方・関節に問題がある方は、負荷のかけ方・動作の選択について専門家に相談することが大切です。

スタチン系薬剤(コレステロールを下げる薬)を服用している方は、まれに筋肉症状(筋肉痛・だるさ・脱力感)が現れることがあります。筋力トレーニング中に異常な筋肉の症状がある場合は、処方医に相談してください。

「筋トレ=激しいトレーニング」ではありません。スクワット・腕立て伏せ・椅子からの立ち座りなど、自分の体力・健康状態に合わせた負荷から始めることが、安全で継続しやすいアプローチです。

今日のまとめ

– 筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)とは、筋肉に負荷をかけて筋力・筋肉量を維持・向上させる運動
– 器具を使うものだけでなく、スクワット・腕立て伏せなど自重運動も含まれる
– 血糖管理・骨密度・サルコペニア予防・基礎代謝など、健康への関わりは多岐にわたる
– 健康づくりを目的とした場合、週2〜3日が推奨されている
– 「体を大きくするためのもの」ではなく「筋力・筋肉量を維持するための手段」として捉える
– 次回は「筋肉はなぜ健康に重要なのか」を整理します

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net
「薬を否定しない。でも薬だけに頼らない。」

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