睡眠不足が健康に与えるコスト——
薬剤師・競技者の視点から考える睡眠の重要性
■ 睡眠を削ることへの誤解
「忙しいから睡眠を削るしかない」
「4〜5時間あれば十分」
「睡眠より優先すべきことがある」
こうした考えで
慢性的な睡眠不足に
陥っている方は非常に多くいます。
しかし睡眠不足が
心身に与えるコストは
多くの方が認識している以上に
深刻です。
薬局での服薬指導の現場でも
生活習慣病・慢性疲労・
メンタルヘルスの問題の背景に
慢性的な睡眠不足が
関与しているケースを
多く経験します。
■ 現場と自分の経験から
服薬指導の場面で
気になることがあります。
生活習慣病の薬を
複数飲んでいる患者さんの
多くが睡眠不足を
抱えているということです。
薬で数値を管理しながら
睡眠を削り続けている。
薬の効果を最大化するための
土台である睡眠が
不足している状態では
薬本来の力が
発揮されにくくなります。
競技ボディビルに
取り組んでいる自身の経験からも
睡眠の重要性を
強く実感しています。
減量期に睡眠時間が
落ちた時期は
同じトレーニング負荷でも
筋力の低下・回復の遅延が
明らかでした。
睡眠を削ることのコストを
体で経験してきました。
■ 睡眠不足が引き起こす具体的な問題
睡眠不足は体全体に
影響を与えます。
【認知機能・パフォーマンスへの影響】
17〜19時間の覚醒継続により
認知パフォーマンスが
血中アルコール濃度0.05%相当まで
低下することが研究で示されています。
判断力・集中力・
ワーキングメモリが著しく低下し
「頑張って夜遅くまで作業したのに
翌日効率が落ちた」という状況は
意志の問題ではなく
生理的な機能低下によるものです。
【身体的健康への影響】
慢性的な睡眠不足
(6時間以下/日)は
以下のリスク増加と
関連することが報告されています。
・肥満リスク上昇
・2型糖尿病リスク上昇
・高血圧・心血管疾患リスクの上昇
・免疫機能の低下
・うつ病・不安障害リスクの上昇
【成長ホルモンと筋肉回復への影響】
入眠後90分の深いノンレム睡眠時に
成長ホルモンの分泌が最大化されます。
成長ホルモンは
筋タンパク質合成の促進・
細胞修復・代謝の正常化に
直接関与します。
睡眠を削ることは
体の修復・回復の機会を
失うことを意味します。
■ 睡眠あり・なしの比較
同じ24時間でも
睡眠の質・量によって
翌日のパフォーマンスは
大きく変わります。
【睡眠不足の翌日】
頭が重い・集中力低下・
判断が遅い・
甘いものへの欲求増加・
免疫低下・回復遅延
【十分な睡眠の翌日】
頭がすっきり・判断が速い・
集中が持続・
体の回復が促進・
免疫機能の維持
睡眠を削って
長時間作業するより
睡眠を確保して
短時間で高いパフォーマンスを
発揮するほうが
長期的に見て
圧倒的に効果的です。
■ 今日からできること
今夜30分早く横になる。
これだけです。
完璧な睡眠環境を
整える必要はありません。
就寝時刻を30分前倒しするだけで
睡眠総量が増加し
深いノンレム睡眠の
確保が改善されます。
加えて以下の介入も推奨されます。
・就寝1時間前の
スマートフォン使用制限
・起床時間の一定化
・就寝前の38〜40℃入浴
・カフェイン摂取を
就寝6時間前までにとどめる
睡眠は時間のコストではなく
翌日のパフォーマンスへの
最大の投資です。
睡眠・生活習慣についてご不明な点は
お気軽にご相談ください。
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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
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