2026/06/25

運動で結果が出る人・出ない人の違い ——運動の原理原則を体系的に理解する 【運動の原理原則シリーズ・第1回】

はじめに

「運動しているのに
結果が出ない」
「同じくらいの運動量でも
人によって
変化に差がある」

こうした疑問を
持つ方は
少なくありません。

この違いの背景には
「運動の原理・原則」を
理解しているか
どうかという
明確な要因があります。

本シリーズでは
全9回にわたり
運動生理学・
スポーツ科学で
体系化されている
運動の原理原則を
解説していきます。

健康寿命を
延ばすための
運動指導において
この原理原則の理解は
基礎となるものです。

第1回は
シリーズ全体の
導入として
原理原則の全体像と
その重要性を
整理します。

なぜ「原理原則」の
理解が重要か

薬物療法には
作用機序という
概念があります。

なぜその薬が
効果を発揮するのか、
どのような
生理学的機序で
体に作用するのかを
理解することで
薬剤師は
適切な
服薬指導が
可能になります。

運動指導においても
同様の考え方が
当てはまります。

「なんとなく運動する」ことと
「原理を理解して
運動を設計する」ことでは
得られる結果に
大きな差が生じます。

運動には
3つの「原理」と
5つの「原則」が
存在し
これらは
運動生理学・
トレーニング科学の
基礎理論として
体系化されています。

結果が出ない方に
見られる共通パターン

服薬指導・運動指導の
現場で
「運動しているのに
変化が乏しい」という方に
共通して見られる
パターンがあります。

同一の負荷で
運動を継続している
(過負荷の原理の欠如)。

体の特定部位のみを
鍛えている
(全面性の原則の欠如)。

目的と
一致しない運動を
選択している
(特異性の原理の欠如)。

開始時から
高い強度で
取り組み
継続が困難になっている
(漸進性の原則の欠如)。

個人の状態に
適合しない運動を
継続している
(個別性の原則の欠如)。

これらは
運動の原理原則を
理解していないことに
起因するケースが
多く見られます。

運動の3つの「原理」
——基礎理論

運動指導の
土台となる
3つの原理を
解説します。

① 過負荷の原理
(オーバーロードの原理)

身体は
従来と同等の
刺激量では
適応(変化)を
起こしません。

トレーニング効果を
得るためには
日常的な負荷を
わずかに
上回る刺激が
必要です。

例:
毎日1000歩の
歩行量を継続している場合
体力的な変化は
生じにくい。

2000歩程度に
増加させることで
適応が
開始される。

② 可逆性の原理

獲得した
身体機能
(筋力・持久力等)は
トレーニングを
中止すると
低下します。

身体機能は
蓄積的な資産
(貯金)ではなく
継続的な
刺激によって
維持される
性質を持っています。

例:
入院による
活動量低下で
筋力が低下する。

デスクワーク中心の
生活で
体力が低下する。

このため
重要なのは
「高強度で
取り組むこと」ではなく
「継続すること」です。

③ 特異性の原理

身体は
与えられた刺激の
種類に応じて
特異的に
適応します。

例:
歩行運動により
歩行能力(持久力)が
向上する。

レジスタンス
トレーニングにより
筋力が向上する。

ストレッチングにより
柔軟性が向上する。

このため
運動の目的に
合致した
種類の運動を
選択することが
不可欠です。

運動の5つの「原則」
——実践理論

3つの原理を
土台として
実際の運動指導で
活用される
5つの原則を
解説します。

① 全面性の原則

身体の
特定部位・
特定機能のみを
鍛えるのではなく
全身を
バランスよく
発達させる
考え方です。

筋力・持久力・
柔軟性・
バランス能力など
複数の要素を
総合的に
考慮することが
重要です。

健康寿命の
維持・向上を
目的とする場合
特に重視すべき
原則です。

② 意識性の原則

運動の目的を
理解して
取り組むことで
効果が
高まるという
原則です。

「猫背改善のための
運動である」
「転倒予防のための
運動である」など
目的意識を持つことで
動作の質・
取り組みの
継続性が
向上します。

③ 漸進性の原則

負荷を
段階的に
増加させる
原則です。

開始時から
高強度に
取り組むのではなく
徐々に
負荷を
上げていくことが
重要です。

例:
10分の散歩から
開始し
15分・20分と
段階的に
延長していく。

健康づくりにおいて
特に重要な
原則とされています。

④ 個別性の原則

個人の年齢・
体力・
健康状態・
既往歴等によって
最適な運動は
異なるという
原則です。

例:
20代男性、
80代女性、
膝関節に
疼痛を有する方では
処方すべき運動が
それぞれ
異なります。

運動処方は
薬物療法と
同様に
個別化が
必要です。

⑤ 反復性・継続性の原則

単回の運動では
身体的な
適応は
生じません。

身体機能の変化は
反復的な
刺激によって
もたらされます。

週1回の
高強度な運動より
毎日5分程度の
低強度な運動の方が
継続性・効果の
両面で
優れている場合が
あります。

健康寿命の観点から
最重要視すべき要素

競技スポーツ・
ボディビルディングとは異なり
一般の方の
健康寿命向上を
目的とする場合
最も重要な要素は

「継続可能な運動」
であるという点です。

理論的に
優れた運動プログラムであっても
継続されなければ
効果は得られません。

運動の原理原則を
一言で
まとめるならば

「身体は与えられた
刺激に適応する。
そのため
無理なく
継続できる刺激を
反復することが
重要である」

という考え方に
集約されます。

現場と自分の経験から

競技ボディビルに
取り組む中で
原理原則を
無視した
トレーニングは
速やかに
不利益として
現れることを
実感しています。

過負荷の原理を
過度に適用すれば
怪我のリスクが
上昇します。

特異性の原理を
無視した
トレーニングでは
目的とする
身体部位の
発達が
得られません。

反復性・継続性の原則を
無視した
過度なトレーニングは
オーバートレーニングに
つながります
(これは過去の記事
「やりすぎは毒」で
解説した内容と
共通する論点です)。

これらの原理原則は
プロアスリート・
競技者だけに
当てはまるものではなく
一般の方の
健康づくりにも
そのまま
適用可能な
基礎理論です。

本シリーズの構成

本シリーズでは
今後
以下の構成で
解説を進めます。

第2回:過負荷の原理
第3回:可逆性の原理
第4回:特異性の原理
第5回:全面性の原則
第6回:意識性の原則
第7回:漸進性の原則
第8回:個別性の原則
第9回:反復性・継続性の原則
(最終回:原理原則の総まとめ)

まとめ

運動で結果が出る人と
出ない人の違いは
才能や
意志の強さではなく
「運動の原理原則」を
理解しているか
どうかという
要因に
集約されます。

3つの原理
(過負荷・可逆性・特異性)と
5つの原則
(全面性・意識性・
漸進性・個別性・
反復継続性)を
理解することで
運動の効果を
最大化し
かつ
継続可能な
形で
取り組むことが
可能になります。

次回(第2回)は
3つの原理の
最初である
「過負荷の原理」について
詳しく
解説します。

運動・健康づくりについてご不明な点は
お気軽にご相談ください。

───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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