2026/07/25

慢性腎臓病(CKD)とは何か ——静かに進む「腎臓の衰え」を 正しく理解する 【病気を知る・生活習慣病編・第5回】

はじめに

「腎臓が悪いと言われたけど、どういうことだろう」「透析って、腎臓と関係があるの?」。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、機能が相当低下するまで自覚症状がほとんど現れません。

だからこそ、腎臓の病気は気づいたときにはすでに進行しているケースが多くあります。第5回は、慢性腎臓病(CKD)の仕組みを正しく理解することを目的に整理します。

慢性腎臓病(CKD)とは?

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の機能が慢性的に低下した状態、または腎臓に何らかの障害がある状態が3ヶ月以上続く病気の総称です。単一の疾患名ではなく、さまざまな原因によって腎機能が低下した状態をまとめた概念です。

診断の目安として、腎臓の働きを示す指標「eGFR(推算糸球体濾過量)」が60mL/分/1.73㎡未満の状態が3ヶ月以上続く場合、あるいは尿たんぱくなどの腎障害の所見が3ヶ月以上続く場合にCKDと診断されます。ただし診断は数値だけで即断するのではなく、尿検査・血液検査・画像検査なども含めて総合的に行われます。

日本のCKD患者数は約1480万人と推計されており(推計値)、成人の約8人に1人が該当するとされています。非常に身近な病気ですが、自覚症状が乏しいため見落とされやすい状態です。

体の中で何が起こっている?

腎臓は、血液を濾過して老廃物・余分な水分・塩分を尿として排泄する臓器です。それだけでなく以下のような多くの機能を担っています。

– 血圧の調整(レニン・アンジオテンシン系を通じて)
– 赤血球の産生を促すホルモン(エリスロポエチン)の分泌
– 骨を強くするビタミンDの活性化
– 電解質バランス(カリウム・リンなど)の維持

CKDでは、腎臓の濾過機能を担う「糸球体」が少しずつ傷つき、機能が低下していきます。多くの場合、慢性的に進行しやすい病気ですが、原因疾患の治療や血圧・血糖の管理によって進行を遅らせることが期待できます。早期に発見して適切に対処することの意義がここにあります。

腎機能が低下すると老廃物が体内に蓄積するだけでなく、血圧調整・貧血・骨代謝・電解質バランスへの影響が重なり、全身にさまざまな症状が現れてきます。さらに腎機能の低下は心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患リスクを高めることも広く知られています。

なぜ起こる?

CKDの主な原因として以下が挙げられます。

糖尿病(糖尿病性腎症)
日本の透析原因疾患の第1位です。高血糖が続くことで腎臓の糸球体が傷つきます。第3回で解説した糖尿病の合併症の一つです。

高血圧(高血圧性腎硬化症)
長期間の高血圧が腎臓の細い血管を傷つけ、腎機能を低下させます。第1回で解説した高血圧が、腎臓にも深刻な影響を与えます。

慢性糸球体腎炎
免疫の異常などによって糸球体に炎症が起きる病気です。IgA腎症など、日本人に多い疾患が含まれます。

高尿酸血症・痛風(第4回参照)
尿酸が腎臓に沈着し腎機能に影響することがあります。

加齢
腎機能は加齢とともに自然に低下します。

このシリーズでこれまで取り上げてきた糖尿病・高血圧・高尿酸血症は、いずれもCKDの主要な原因です。生活習慣病が積み重なることで、腎臓へのダメージも積み重なっていきます。

放置するとどうなる?

CKDの最も深刻な転帰は「末期腎不全」への移行であり、透析療法や腎移植が必要になります。日本では現在約35万人以上が透析治療を受けており、その原因疾患の第1位が糖尿病性腎症です。透析は週3回・1回あたり4〜5時間の治療を生涯にわたって継続する必要があり、日常生活への影響が非常に大きくなります。

またCKDは心血管疾患リスクを著しく高めることが広く知られています。腎機能が低下するほど心筋梗塞・脳梗塞・心不全のリスクが上昇します。「腎臓の病気だから腎臓だけの問題」ではなく、全身に影響が及ぶ病気です。

CKDが進行すると、以下のような症状・問題が生じます。

– 貧血(エリスロポエチン分泌の低下による)
– 骨がもろくなる(ビタミンD活性化の低下による)
– 電解質バランスの乱れ(高カリウム血症など)
– 倦怠感・浮腫(むくみ)・食欲低下・夜間頻尿

よくある誤解

❌「むくみや倦怠感がないから腎臓は大丈夫」

✅ CKDは機能が相当低下するまで自覚症状が現れにくい病気です

むくみ・倦怠感・食欲低下・夜間頻尿などの症状が現れるころには、腎機能がすでにかなり低下しているケースが多くあります。「症状がないから大丈夫」ではなく、健康診断でeGFRと尿たんぱくを定期的に確認することが、早期発見の重要な手段です。

薬剤師からのポイント

CKDの方は、薬の使い方に特別な注意が必要です。腎臓は多くの薬の排泄に関わっているため、腎機能が低下すると薬が体内に蓄積しやすくなり、副作用が出やすくなります。

特に注意が必要な点として以下が挙げられます。

市販の鎮痛薬(NSAIDs:ロキソプロフェン・イブプロフェンなど)は腎機能をさらに悪化させることがあります。CKDの方は自己判断での使用を避け、処方医に相談することが大切です。

腎機能に応じた用量調整が必要な薬が多くあります。腎機能が低下している方が通常の用量で服用すると、過剰な効果や副作用が現れることがあります。

造影剤を使用する検査(CT・心臓カテーテルなど)の前後にも腎機能への影響に注意が必要な場合があります。

「薬を飲んでいるから大丈夫」ではなく、腎機能の状態に合わせた薬の管理が重要です。服薬中の薬に不安がある場合は、処方医に相談することをお勧めします。

今日のまとめ

– CKDとは、腎機能の低下または腎障害が3ヶ月以上続く状態の総称。診断は数値だけでなく総合的に行われる
– 腎臓は老廃物排泄・血圧調整・貧血予防・骨代謝・電解質管理など全身に関わる多機能臓器
– 糖尿病・高血圧・高尿酸血症がCKDの主要な原因で、生活習慣病の積み重ねが腎臓を傷つける
– 多くの場合進行しやすいが、原因疾患の管理によって進行を遅らせることが期待できる
– eGFRと尿たんぱくの定期確認が早期発見の重要な手段
– CKDの方は薬の影響を受けやすく、市販の鎮痛薬の自己判断使用には特に注意が必要

病気を知ることは、自分の体を知ること。
正しい知識は、健康寿命を守る第一歩です。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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