2026/08/04

中性脂肪 ——エネルギーの貯蔵庫が あふれるとどうなるかを正しく理解する 【健康診断を読み解くシリーズ・第5回】

 

はじめに

「中性脂肪が高いと言われたけど、脂っこいものを食べていないのに」「コレステロールと何が違うの?」。健康診断で中性脂肪の数値が引っかかっても、何が問題なのかイメージしにくい方が多くいます。

第5回は「中性脂肪」という検査項目を、薬剤師の視点から読み解きます。

この項目は何を見ている?

中性脂肪(トリグリセリド、TG)とは、食事から摂取したり体内で合成されたりした脂肪が、血液中を流れている状態のものです。体にとっては「エネルギーの貯蔵庫」として重要な役割を持っています。

食事から摂ったエネルギーが消費しきれないと、中性脂肪として脂肪組織に蓄えられます。必要なときにエネルギーとして利用される仕組みで、本来は体に必要な物質です。

問題になるのは、この中性脂肪が血液中に過剰にあふれた状態が続くことです。血管の内壁にダメージを与え、動脈硬化を進行させるリスクがあります。またHDLコレステロール(善玉)を低下させるという関係があることも知られており、前回解説したHDLとも深くつながっています。コレステロールが「血管を詰まらせる材料」に近いイメージであるのに対し、中性脂肪は「エネルギーが余ってあふれ出た状態」に近いイメージです。

基準値は?

日本動脈硬化学会のガイドラインによる基準は以下の通りです。

– 基準値(空腹時採血):150mg/dL未満
– 高トリグリセリド血症:150mg/dL以上

中性脂肪は食事の影響を大きく受けます。食後は数値が大きく上昇するため、健康診断では空腹時(前日夜から食事を取らない状態)で採血することが基本です。

随時採血(食後採血)の場合は175mg/dL未満が目安とされることがあります。健診の結果票に「空腹時」か「随時」かの記載を確認することも大切です。「前日に食事制限をしなかった日の数値」は、空腹時の基準と単純に比較できない点に注意が必要です。

高いと何が考えられる?

中性脂肪が高い場合に考えられる主な原因として以下が挙げられます。

糖質・アルコールの過剰摂取
中性脂肪が高い方に最も多く関係する要因です。肝臓は余分な糖質やアルコールを中性脂肪に変換して蓄えるため、脂質を控えていても糖質やお酒が多ければ数値は上がります。

肥満・運動不足
体内のエネルギーバランスが崩れると中性脂肪が蓄積されやすくなります。

遺伝的体質
家族性高トリグリセリド血症など、遺伝的に中性脂肪が高くなりやすい体質があります。

疾患・薬剤の影響
糖尿病・甲状腺機能低下症・腎疾患などの疾患が関与することがあります。またステロイド薬・一部の降圧薬・抗精神病薬なども中性脂肪を上昇させることが知られています。

中性脂肪は生活習慣の影響を受けやすい項目です。数値が高い場合は、どの要因が関係しているかを整理することが対策の出発点になります。

関係する病気

中性脂肪と深く関わる病気として以下が挙げられます。

脂質異常症
病気を知る【生活習慣病編】第2回で解説しています。中性脂肪の高値は脂質異常症の診断基準の一つです。

メタボリックシンドローム
中性脂肪高値・HDL低値・血圧高値・血糖高値が重なった状態で、心血管疾患リスクが大幅に高まります。

動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞
中性脂肪が高い状態はHDLの低下を介して、また直接的にも動脈硬化を促進します。

急性膵炎
中性脂肪が非常に高い場合(500mg/dL以上など)、急性膵炎のリスクが高まることが知られています。腹部の激しい痛みを伴う重篤な状態です。

脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
肝臓に中性脂肪が蓄積した状態で、次回以降解説するAST・ALT・γ-GTPとも関連します。

よくある誤解

❌「中性脂肪が高いのは、油っこいものを食べすぎているせい」

✅ 中性脂肪は糖質・アルコールの過剰摂取によって特に上昇しやすい項目です

「脂っこいものを控えているのに中性脂肪が高い」という方が多くいます。実は中性脂肪は、食事中の脂質よりも糖質・アルコールの影響を強く受けます。肝臓は余分な糖質やアルコールを中性脂肪に変換するため、脂質を控えていても糖質やお酒が多ければ数値は上がります。「脂肪を食べれば中性脂肪が増える」という単純な話ではありません。甘いものやアルコールを多く摂っている方は、まずその見直しから始めることが効果的です。

薬剤師からのポイント

中性脂肪を下げる薬(フィブラート系薬剤・EPA製剤・ニコチン酸製剤など)は、生活習慣の改善と組み合わせることで効果を発揮します。

注意点として、フィブラート系薬剤をスタチン系薬剤と併用すると、筋肉への副作用(ミオパチー・横紋筋融解症)のリスクが高まる場合があります。複数の脂質関連の薬を服用している方は、筋肉症状(だるさ・痛みなど)に注意し、気になる症状があれば処方医に相談してください。

また服薬中の薬が中性脂肪を上昇させている場合があります。ステロイド薬・一部の降圧薬・抗精神病薬などが該当することがあります。数値が高い方は、服薬状況も含めて処方医に確認することをお勧めします。

生活習慣の改善では、糖質・アルコールの見直しが中性脂肪に最も直接的な効果があります。運動習慣の定着とあわせて取り組むことが効果的です。

今日のまとめ

– 中性脂肪はエネルギーの貯蔵庫として必要な物質だが、過剰になると動脈硬化リスクが高まる
– 空腹時150mg/dL以上が高トリグリセリド血症の目安。食事の影響を受けやすいため空腹時採血が基本
– 中性脂肪は脂質よりも糖質・アルコールの影響を強く受ける
– 中性脂肪が高いとHDLが低下しやすくなる。この組み合わせは動脈硬化リスクをさらに高める
– 非常に高い場合(500mg/dL以上など)は急性膵炎のリスクもある
– 糖質・アルコールの見直しと運動習慣が、中性脂肪管理の中心的なアプローチ

健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。
自分の体の変化に気づき、健康寿命を守るための大切なヒントです。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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