2026/08/05

脂肪肝とは何か ——肝臓に脂肪がたまると 体に何が起きるかを正しく理解する 【病気を知る・生活習慣病編・番外編】

はじめに

「健康診断でγ-GTPやALTが高いと言われた」「脂肪肝と言われたけど、お酒を飲んでいないのに」。こういう声を、薬局の現場でよく耳にします。

脂肪肝は自覚症状がほとんどないまま進行する病気です。しかし放置すると肝硬変・肝がんへと進行するリスクがあることが知られています。脂肪肝の仕組みを正しく理解することを目的に整理します。

脂肪肝とは?

脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。肝臓全体の5%以上に脂肪が蓄積している状態が目安とされています。

脂肪肝には大きく2種類あります。

アルコール性脂肪肝は、過度の飲酒によって肝臓での脂肪代謝が障害されることで起きます。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)は、飲酒とは関係なく発症するものです。肥満・糖尿病・脂質異常症・メタボリックシンドロームなどと深く関連しており、日本人の脂肪肝の多くはこのNAFLDです。

NAFLDの中でも、炎症や肝細胞の障害を伴う進行性の状態を「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Steatohepatitis)」と呼びます。NASHは肝硬変・肝がんへと進行するリスクがある状態として特に注意が必要です。

体の中で何が起こっている?

肝臓は、食事から摂取した栄養素の代謝・解毒・胆汁の産生・タンパク質の合成など、体の中で最も多くの役割を担う臓器の一つです。

通常、脂肪は肝臓でエネルギーとして利用されたり、全身に送り出されたりします。しかし過食・運動不足・アルコールの過剰摂取などによって処理しきれない脂肪が増えると、肝臓の細胞に中性脂肪が蓄積し始めます。

さらにインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)が加わると、肝臓への脂肪の流入が増加します。蓄積した脂肪が酸化ストレス・炎症を引き起こすと肝細胞が傷つき始めます。これが単純な脂肪肝からNASHへと進行するメカニズムです。

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれており、かなり傷ついても自覚症状がほとんど現れません。だからこそ、健康診断の数値の変化が早期発見の重要な手段となります。

なぜ起こる?

脂肪肝に関わる主なリスク要因として以下が挙げられます。

– 過食・糖質・カロリーの過剰摂取(特に果糖は肝臓での中性脂肪合成を促進する)
– アルコールの過剰摂取
– 運動不足
– 肥満(特に内臓脂肪の蓄積)
– 2型糖尿病・インスリン抵抗性
– 脂質異常症(特に中性脂肪高値)
– 急激な体重減少(極端なダイエットでも脂肪肝が起きることがある)
– 一部の薬剤(ステロイド薬・タモキシフェンなど)

「お酒を飲まないから脂肪肝にはならない」は誤りです。糖質・カロリーの過剰摂取・肥満・運動不足があれば、飲酒に関係なく脂肪肝は起きます。特に果糖(果物の食べすぎ・清涼飲料水・果汁飲料に多く含まれる)は肝臓での中性脂肪合成を促進するとされており、注意が必要です。

放置するとどうなる?

脂肪肝を放置した場合の経過は以下の通りです。

単純性脂肪肝の段階
肝臓に脂肪が蓄積しているが炎症は伴っていない状態です。適切な生活習慣の改善によって回復が期待できます。この段階での対策が最も重要です。

NASHへの進行
肝臓に炎症・線維化が生じます。自覚症状はほとんどありませんが、肝細胞の障害が進んでいきます。NAFLDの10〜20%程度がNASHに進行するとされています。

肝硬変への移行
肝臓の正常な組織が線維組織に置き換わり、肝機能が大きく低下します。腹水・黄疸・食道静脈瘤などの症状が現れることがあります。肝硬変は基本的に不可逆的な変化です。

肝がんへのリスク
NASHを背景とした肝がんは近年増加傾向にあることが報告されています。

また脂肪肝は心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患リスクとも関連することが知られています。「肝臓だけの問題」ではなく、全身の健康に影響する病気として捉えることが重要です。

よくある誤解

❌「お酒を飲まないから、脂肪肝にはならない」

✅ 脂肪肝の多くは飲酒に関係なく発症します

「脂肪肝=お酒の飲みすぎ」というイメージがありますが、日本人の脂肪肝の多くは非アルコール性(NAFLD)です。糖質・カロリーの過剰摂取・運動不足・肥満・糖尿病などが主な原因となります。お酒を全く飲まなくても、生活習慣によって脂肪肝になることがあります。

健診でALTやγ-GTPが高めの方は、飲酒の有無に関わらず脂肪肝の可能性を念頭に置くことが大切です。

薬剤師からのポイント

脂肪肝に対して直接効果を持つ薬は、現時点では限られています。治療の中心は生活習慣の改善です。体重の5〜10%の減少によって肝臓の脂肪量が改善するというエビデンスがあります。極端なダイエットではなく、無理なく継続できる食事・運動の見直しが重要です。

一方で、服薬中の薬が脂肪肝に影響している場合があります。ステロイド薬・タモキシフェン・一部の抗うつ薬・抗精神病薬などは脂肪肝の原因となることがあります。健診で肝機能の数値が高くなってきた方は、服薬との関係を念頭に置き、処方医に相談することが大切です。

また糖尿病・脂質異常症・肥満を合併している方は、それらの管理が脂肪肝の改善にも直結します。薬・栄養・運動を組み合わせた総合的なアプローチが、脂肪肝と向き合う正しい方向性です。

今日のまとめ

– 脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態(肝臓の5%以上が目安)
– 飲酒に関係なく発症する非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が多数を占める
– 自覚症状がないまま進行し、NASH→肝硬変→肝がんへの移行リスクがある
– 体重の5〜10%の減少で肝臓の脂肪が改善するエビデンスがある。生活習慣の改善が治療の中心
– 糖質・果糖・アルコールの過剰摂取が主な原因。「お酒を飲まないから大丈夫」は誤り
– 服薬中の薬が脂肪肝に影響することがある。肝機能の数値が高い場合は処方医に相談する

病気を知ることは、自分の体を知ること。
正しい知識は、健康寿命を守る第一歩です。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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