2026/08/11

クレアチニン ——腎臓の「ろ過能力」を映す数値を 正しく理解する 【健康診断を読み解くシリーズ・第9回】

はじめに

「クレアチニンが高いと言われたけど、何のこと?」「腎臓と関係があるの?」。健康診断でクレアチニンという言葉が出ても、何を示しているのかわからないという方が多くいます。

クレアチニンは腎臓がどれだけ正常に機能しているかを把握するための重要な指標です。第9回は「クレアチニン」という検査項目を、薬剤師の視点から読み解きます。

この項目は何を見ている?

クレアチニンとは、筋肉がエネルギーを使うときに生じる老廃物です。筋肉の中にあるクレアチンという物質が代謝されるときに産生され、血液中に放出されます。

クレアチニンは腎臓の糸球体(血液をろ過する部分)でほぼ完全にろ過されて尿として排泄されます。そのため血液中のクレアチニン濃度は、腎臓のろ過能力を直接反映します。

腎機能が正常であれば、クレアチニンは速やかにろ過・排泄されるため血中濃度は低く保たれます。腎機能が低下すると、ろ過されないクレアチニンが血液中に蓄積し、数値が上昇します。

健康診断でこの数値を確認することで、腎臓の機能低下を早期に把握することができます。クレアチニンは次回解説するeGFRの計算にも使用されており、腎機能評価の基本となる指標です。

基準値は?

クレアチニンの一般的な基準値には男女差があります。

– 男性:0.65〜1.09mg/dL程度
– 女性:0.46〜0.82mg/dL程度

女性の方が基準値が低い理由は、一般的に男性より筋肉量が少ないため、クレアチニンの産生量が少ないからです。

健診機関によって基準値の表記が若干異なる場合があります。また年齢・体格・筋肉量によっても数値が影響を受けます。そのため一度の数値だけで判断するのではなく、経年的な変化を追うことが重要です。「昨年より上がっていないか」という視点が大切です。

高い(低い)と何が考えられる?

クレアチニンが高い場合に考えられる主な原因として以下が挙げられます。

腎機能の低下
最も重要な原因です。糖尿病性腎症・高血圧性腎硬化症・慢性糸球体腎炎など、腎臓そのものの機能が低下しているケースです。

脱水
一時的な脱水状態では血液が濃縮されクレアチニン値が上昇することがあります。水分を十分に摂った上で再検査すると改善することがあります。

筋肉量の影響
筋肉量が多い方(アスリート・筋力トレーニングをしている方)は、クレアチニンの産生量が多いため数値が高めに出ることがあります。この場合は必ずしも腎機能の低下を意味しません。eGFRと合わせた評価が重要です。

薬剤・検査の影響
一部の薬剤(NSAIDs・一部の抗菌薬など)や造影剤が腎機能に影響し、クレアチニンを上昇させることがあります。

クレアチニンが低い場合は、筋肉量が少ない(サルコペニアの可能性)ことを示している場合があります。健康寿命シリーズで解説したサルコペニアとのつながりもある点で、「低いから安心」とは必ずしも言えません。

関係する病気

クレアチニンと深く関わる病気として以下が挙げられます。

慢性腎臓病(CKD)
病気を知る【生活習慣病編】第5回で詳しく解説しています。クレアチニンの上昇はCKDの進行を示す重要なサインです。

糖尿病性腎症・高血圧性腎硬化症
糖尿病・高血圧によって腎臓の血管が傷つき、クレアチニンが上昇します。

急性腎障害(AKI)
短期間でクレアチニンが急上昇する場合に疑われます。早急な医療対応が必要な状態です。

サルコペニア
クレアチニンが低い場合、筋肉量の低下を示している可能性があります。高齢者では特に注意が必要です。

よくある誤解

❌「クレアチニンが少し高いだけなら、腎臓は大丈夫」

✅ クレアチニンは腎機能がかなり低下するまで大きく上昇しにくい指標です

腎臓は予備能力が高く、機能が半分程度に低下してもクレアチニンが正常範囲内に収まることがあります。「少し高い」段階ですでに腎機能がかなり低下している可能性があります。また「正常範囲内だから問題ない」とも言い切れません。昨年より数値が上昇していないか、という「変化の方向」を確認することが重要です。

薬剤師からのポイント

クレアチニン・腎機能の低下がある方は、薬の使い方に特別な注意が必要です。腎臓は多くの薬の排泄に関わっており、腎機能が低下すると薬が体内に蓄積しやすくなり、副作用が出やすくなります。

特に注意が必要な点として以下が挙げられます。

市販の鎮痛薬(NSAIDs:ロキソプロフェン・イブプロフェンなど)は腎機能をさらに悪化させることがあります。腎機能が低下している方は自己判断での使用を避け、処方医に相談することが大切です。

造影剤を使用するCT検査・心臓カテーテルの前後にも腎機能への影響に注意が必要な場合があります。検査前に腎機能の状態を医療機関に伝えておくことが重要です。

腎機能に応じた用量調整が必要な薬が多くあります。腎機能が低下しているにもかかわらず通常の用量で服用すると、過剰な効果や副作用が現れることがあります。

「クレアチニンが少し上がってきた」と感じたら、服薬中の薬との関係を処方医に確認することをお勧めします。

今日のまとめ

– クレアチニンは筋肉の代謝で生じる老廃物。腎臓のろ過能力を反映する重要な指標
– 基準値は男女差がある(男性0.65〜1.09mg/dL・女性0.46〜0.82mg/dL程度)
– クレアチニンは腎機能がかなり低下するまで大きく上昇しにくい。「少し高い」段階で注意が必要
– 筋肉量が多い方は数値が高めに出ることがある。逆に低い場合はサルコペニアの可能性もある
– 経年的な変化を追うことが重要。一度の数値より「変化の方向」を確認する
– 腎機能低下がある方は市販の鎮痛薬の自己判断使用に注意。処方医に相談することが大切

健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。
自分の体の変化に気づき、健康寿命を守るための大切なヒントです。

Well Labでは、これからも薬剤師の視点で、健康寿命につながる知識をわかりやすくお届けしていきます。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net

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