はじめに
「痛風はビールを飲む人がなる病気」「プリン体を避ければ大丈夫」。高尿酸血症・痛風と生活習慣の関係は、特定の食品だけに原因を求めがちなテーマです。
第10回は「高尿酸血症・痛風と生活習慣」の関係を整理します。
高尿酸血症・痛風と生活習慣は、どう関係する?
尿酸値の上昇には、遺伝的体質・加齢・性別などの変えられない要因と、食事・飲酒・体重・運動・水分摂取などの生活習慣という変えられる要因が複合的に関与しています。
重要なのは「プリン体の多い食事だけが原因ではない」という点です。血液中の尿酸の多くは体内で産生されており、食事からのプリン体摂取はその一部に過ぎません。アルコール全般・果糖・肥満・脱水なども尿酸値の上昇に関与しており、「特定の食品を避ければ解決する」という単純な話ではありません。
また高尿酸血症は痛風発作が起きていない段階でも、腎機能・血管・心血管疾患リスクに影響することが知られています。「発作がなければ大丈夫」という考え方は正確ではなく、尿酸値そのものを管理することに意味があります(病気を知る【生活習慣病編】第4回・健康診断を読み解くシリーズ第8回参照)。
なぜ生活習慣が関係するのか
飲酒
アルコールは尿酸の産生を増やし、腎臓からの排泄を低下させます。種類を問わずアルコール全体が尿酸値に影響します(第5回参照)。「ビールはダメだが焼酎ならいい」という考え方は誤りで、アルコール量そのものが問題です。「ビールはダメだけれど焼酎なら飲んでもいいんですよね」と言う方もいますが、体内に取り込まれるアルコール量が問題です。
果糖・甘味飲料
ショ糖(砂糖)の構成成分である果糖は代謝される際にプリン体分解亢進をきたし血清尿酸値を上昇させます。果糖を多く含む甘味飲料や果物ジュースは控えるようにすることが推奨されています。清涼飲料水・エナジードリンク・加糖飲料の過剰摂取は、食事のプリン体とは別の経路で尿酸値を上昇させる点で注意が必要です。
食事(プリン体)
プリン体を多く含む食品(レバー・魚卵・干物・一部の魚介類など)の過剰摂取は尿酸産生を促します。ただし食事全体のカロリーバランスを整えることが、特定の食品を厳しく排除するより基本的なアプローチとされています。
肥満・体重増加
肥満はインスリン抵抗性を介して腎臓からの尿酸排泄を低下させ、尿酸値上昇と関連します(第4回参照)。体重管理は尿酸値管理においても重要なアプローチの一つです。
脱水・水分不足
水分が不足すると尿が濃くなり、尿酸が排泄されにくくなります。また脱水は痛風発作の直接的な誘因にもなることがあります。十分な水分摂取が尿酸管理の基本です。
運動との関係
適度な有酸素運動は体重管理・インスリン抵抗性の改善を介して尿酸値管理に関連することがあります。一方、激しい無酸素運動は筋肉細胞の分解を介してプリン体が産生され尿酸値を一時的に上昇させることがあります。ウォーキング・水泳・サイクリングなど、息が弾む程度の中強度運動を週3〜5回、30分程度が目安とされており、運動前後の水分補給も重要です。
ガイドラインではどう考えられているか
日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年追補版)」では、生活習慣の改善として以下の方向性が示されています。
食事療法
栄養バランスの良い食事を心がけることで、体重を適正に近づけるとともに、尿酸値の低下が期待できます。プリン体を多く含む食品は控え、砂糖や果糖の摂りすぎも尿酸値の上昇につながるため注意が必要とされています。
飲酒の管理
飲酒の際には1日の目安を守り、休肝日も週に1〜2日設けるようにすることが推奨されています。
水分摂取
1日2リットル以上の水分摂取(主に水・麦茶などノンカロリーの飲料)が、尿酸の排泄を促す観点から推奨されています。
薬物療法の基準
尿酸値が9.0mg/dL以上、または合併症がある場合は薬物治療も検討されます。7.0mg/dLを超えたすべての方に薬が必要なわけではなく、まず生活習慣の改善が基本のアプローチです。ただし数値が高い・合併症がある場合は薬物療法の判断が必要になります。
どんな影響と関係する?
高尿酸血症・痛風の管理において生活習慣が重要な状況として以下が挙げられます。
痛風発作の予防
生活習慣の改善により尿酸値を管理することは、発作の予防につながります。ただし急激な食事制限による尿酸値の急変動が発作を誘発することがあるため、急激な制限は避けることが大切です。
腎機能への影響
高尿酸血症が続くと腎機能低下・尿路結石と関連することが示されています。水分摂取・体重管理が腎保護の観点からも重要です。
心血管・メタボリックリスクとの関連
高尿酸血症は高血圧・メタボリックシンドロームと合併しやすく、心血管リスクと関連します。このシリーズで取り上げた他の生活習慣病と重なることが多く、生活習慣全体の改善が複数のリスク低減につながります。
よくある誤解
❌「ビールをやめれば、尿酸値は下がる」
↓
✅ アルコール全体・果糖・肥満・脱水など複数の要因が関与しています
「ビールはプリン体が多いから問題」という理解は部分的には正しいですが、アルコールの種類よりアルコール量そのものが問題です。またアルコールをやめても、果糖の過剰摂取・肥満・脱水・遺伝的体質が関与している場合は尿酸値が下がらないことがあります。生活習慣全体を見直す視点が重要です。
薬剤師からのポイント
尿酸降下薬(フェブキソスタット・アロプリノール・ベンズブロマロンなど)を服用中の方は、自己判断での中止は避けてください。薬をやめると尿酸値が元に戻り、急激な変動が痛風発作を誘発する可能性があります。
利尿薬(サイアザイド系・ループ利尿薬など)は腎臓からの尿酸排泄を低下させ、尿酸値を上昇させることがあります。高血圧の治療で利尿薬を服用している方の尿酸値が上がってきた場合、服薬との関係を処方医に確認することが大切です(健診シリーズ第8回参照)。
痛風発作が起きたとき、自己判断で尿酸降下薬の開始・中止をすることは発作を長引かせる可能性があります。発作中の対処と、落ち着いた後の尿酸値管理は目的・タイミングが異なります。不安なことは処方医に相談することをお勧めします。
今日のまとめ
– 高尿酸血症の原因はプリン体食品だけでなく、アルコール全般・果糖・肥満・脱水が複合的に関与する
– 「ビールをやめれば解決」ではなく、アルコール量全体・食事全体・体重・水分摂取の見直しが重要
– 1日2リットル以上の水分摂取が尿酸排泄の観点から推奨されている
– 適度な有酸素運動は有用だが、激しい運動・脱水は発作の誘因になることがある
– 尿酸降下薬は自己判断で中止せず、利尿薬など服薬中の薬との関係も処方医に確認する
すべてを一度に変える必要はありません。まずは自分の飲酒習慣・水分摂取・体重を振り返り、できることから考えてみてください。
───
北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net
「薬を否定しない。でも薬だけに頼らない。」
©2023 TSUNAGARUCRAFT