2026/09/12

慢性腎臓病(CKD)と生活習慣 ——「腎臓だけの問題」ではなく 全身の生活習慣が関わる話 【生活習慣病を予防・改善するシリーズ・第11回】

はじめに

「腎臓が悪いと言われたけど、食事の何に気をつければいいの?」「CKDの管理って、食事制限だけ?」。慢性腎臓病と生活習慣の関係は、食事だけでなく広い視野で考える必要があります。

第11回は「慢性腎臓病(CKD)と生活習慣」の関係を整理します。このシリーズ第7〜10回で解説してきた高血圧・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症との深いつながりも確認します。

CKDと生活習慣は、どう関係する?

CKDの発症・進行には、遺伝・加齢・体質などの変えられない要因と、生活習慣・原因疾患の管理という変えられる要因が複合的に関与しています。CKDの重症化の危険因子としては、高血圧・尿たんぱく異常・腎機能異常・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙などが報告されています(日本腎臓学会 CKD診療ガイド2024)。

重要なのは、このシリーズで解説してきた高血圧・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症の管理が、そのままCKDの進行を防ぐことにつながっているという点です。「CKDは腎臓だけの問題」ではなく、全身の生活習慣の積み重ねが腎臓に影響しています。

またCKDが進行すると、腎臓の機能低下が血圧・貧血・骨代謝・心血管リスクに影響するという双方向の関係があります(病気を知る【生活習慣病編】第5回・健診シリーズ第9・10回参照)。

なぜ生活習慣が関係するのか

減塩
食塩の過剰摂取は高血圧を招き、腎機能低下につながります。研究では1日食塩摂取量が4.8g減少するごとに尿たんぱくが34%・アルブミン尿が36%減少したことが示されており(令和7年公表「積極的に予防する!CKD発症・進展予防のためのマネージメントガイドブック」)、減塩はCKDの進行抑制においても重要なアプローチです。

血圧管理
高血圧はCKD進行の最大の要因の一つです。適切な血圧管理がCKDの進行を遅らせることが示されています(第7回参照)。

血糖管理
糖尿病性腎症(糖尿病関連腎臓病)は、日本の透析原因疾患の第1位です(病気を知る【生活習慣病編】第5回参照)。血糖コントロールがCKDの進行に深く関与します(第9回参照)。

体重管理
肥満はCKDの進行リスクと関連します。肥満または過体重のCKD患者を対象にした研究では、食事指導・運動療法による減量介入が腎機能保護に関連することが示されています(第4回参照)。

喫煙
喫煙はCKDの進行を促進することが示されており、禁煙はCKD管理においても推奨されています(第6回参照)。

運動
以前はCKD患者に安静が推奨されることもありましたが、現在のガイドラインでは適度な運動がCKD患者にも有益であることが示されています。ただし腎機能の程度・合併症の状況によって適切な運動の種類・強度が異なるため、主治医と相談しながら取り組むことが重要です(第2回参照)。

ガイドラインではどう考えられているか

日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」および「慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル」では、以下の方向性が示されています。

食塩制限
CKD患者の食塩摂取量は3g/日以上6g/日未満とすることが基本とされています。過度な制限(3g/日未満)は低ナトリウム血症のリスクがあるため、目標の下限が設けられています。一般向けの6g/日未満目標よりさらに厳しい管理が求められる点が特徴です。

たんぱく質管理
CKDのステージが進むにつれて、たんぱく質制限が検討されます。ステージG3(eGFR 30〜59)では0.8〜1.0g/kg体重/日、ステージG4〜G5(eGFR 30未満)では0.6〜0.8g/kg体重/日が目安とされています。ただしたんぱく質制限はサルコペニア・栄養不足のリスクも伴うため、管理栄養士・主治医の指導のもとで行うことが推奨されています。

カリウム・リンの管理
CKDが進行すると高カリウム血症・高リン血症のリスクが高まります。この場合はカリウム・リンを多く含む食品(生野菜・果物・乳製品・一部の加工食品・インスタント食品など)の管理が必要になることがあります。ただしすべてのCKD患者に当てはまるわけではなく、ステージと血液検査の結果によって個別に判断されます。

どんな影響と関係する?

CKDの管理において生活習慣が特に重要な状況として以下が挙げられます。

早期段階(G1〜G2)
まだ腎機能低下が軽度の段階では、原因疾患(高血圧・糖尿病など)の管理・減塩・禁煙・体重管理が進行を遅らせる上で特に重要です。この段階での積極的な介入が最も予防的意義を持ちます。

中等度以降(G3以降)
たんぱく質制限・カリウム・リンの管理が必要になる場合があり、個別化された食事管理が重要になります。管理栄養士との連携が推奨されます。

透析移行の予防
適切な生活習慣の管理によってCKD進行を遅らせることは、透析導入時期を遅らせることに関連することが示されています。日本の新規透析導入患者数は2009年以降、減少傾向に転じており、CKD対策の成果が現れてきています。

よくある誤解

❌「CKDは、たんぱく質を完全にカットすればいい」

✅ たんぱく質制限はステージと状態によって個別に設定されます。過度な制限はサルコペニア・栄養不足のリスクがあります

「腎臓が悪いならたんぱく質は一切摂れない」という誤解があります。しかしたんぱく質制限はCKDのステージと血液検査の結果によって個別に設定されるものです。早期段階では一般成人と大きく変わらない量が摂れる場合もあります。過度なたんぱく質制限はサルコペニア・栄養不足・免疫機能の低下につながるリスクがあります。自己判断で極端に制限するのではなく、主治医・管理栄養士の指導のもとで行うことが重要です。

薬剤師からのポイント

CKD患者の薬の管理は特に重要です。腎臓は多くの薬の排泄に関わっており、腎機能が低下すると薬が体内に蓄積しやすくなり副作用が出やすくなります。

市販の鎮痛薬(NSAIDs:ロキソプロフェン・イブプロフェンなど)はCKDをさらに悪化させることがあります。頭痛・腰痛などで市販薬を頻繁に使用している方は、処方医に相談することが重要です(健診シリーズ第10回参照)。

造影剤を使用するCT検査・心臓カテーテルの前後にも腎機能への影響に注意が必要な場合があります。検査前に腎機能の状態を医療機関に伝えることが大切です。

一部の糖尿病治療薬(メトホルミンなど)・一部の抗菌薬・痛風治療薬はeGFRの値によって減量・中止が必要なことがあります。複数の科で処方を受けている方は、すべての処方内容を主治医・薬剤師に共有することをお勧めします。

今日のまとめ

– CKDの進行には高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙などが関与する。全身の生活習慣の管理が重要
– 食塩制限(3g/日以上6g/日未満)はCKDの進行抑制においても重要なアプローチ
– たんぱく質制限はステージと状態によって個別に設定される。自己判断での極端な制限は避ける
– カリウム・リンの管理が必要かどうかもステージと検査値によって異なる
– 市販の鎮痛薬(NSAIDs)はCKDを悪化させることがある。複数の処方は主治医・薬剤師に共有を

すべてを一度に変える必要はありません。まずは自分の腎機能の状態と生活習慣を振り返り、できることから考えてみてください。

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北川 俊一(薬剤師 / スポーツファーマシスト)
Well Lab — well-lab-kitagawa.net
「薬を否定しない。でも薬だけに頼らない。」

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