はじめに
「体にいい」と分かっていても、なんとなく体を動かしているだけになっていないでしょうか。ウォーキングやジョギングをしていても、それが自分にとって軽すぎるのか、ちょうどいいのか、判断する基準を持っている方は意外と少ないものです。今回は、運動の効果を実感しやすくするための、心拍数を使った強度確認の方法をご紹介します。
① 運動強度は、体の変化とどう関係する?
運動の効果は、その強度によって変わってきます。あまりに軽すぎる運動では十分な負荷にならず、体力向上や脂肪燃焼といった効果を得にくくなります。一方で、強すぎる運動は体への負担が大きく、継続が難しくなったり、思わぬ不調につながったりすることもあります。自分にとって適切な強度を客観的に知るための、シンプルで実用的な指標が心拍数です。
② なぜ心拍数で強度がわかるのか
運動をすると、体はより多くの酸素や栄養を筋肉に届けるために心拍数を上げます。つまり心拍数は、その時点で体にどれくらいの負荷がかかっているかを映す指標だといえます。
ここで広く使われているのが「カルボーネン法」と呼ばれる計算方法です。1957年にKarvonenらが発表した研究をもとに広まった考え方で、現在も運動指導の現場で多く使われています。
まず、年齢から大まかな最大心拍数を求めます(簡易式)。
220-年齢
そこから、安静にしているときの心拍数(安静時心拍数)を引きます。
(220-年齢)-安静時心拍数
これは「予備心拍数(HRR:Heart Rate Reserve)」と呼ばれ、その人が運動によって上乗せできる心拍数の幅を表します。ここに、目指したい運動強度をかけます。強度は50%〜70%程度が目安とされ、運動を始めたばかりの方はまず50%程度から取り組むのがよいでしょう。
(220-年齢-安静時心拍数)×強度
最後に、安静時心拍数を足し戻すと、目標心拍数が求められます。
(220-年齢-安静時心拍数)×強度+安静時心拍数
③ 実際に計算してみる
たとえば、40歳・安静時心拍数60・運動を始めたばかりで強度50%の場合で計算してみます。
・最大心拍数:220-40=180
・予備心拍数:180-60=120
・強度をかける:120×0.5=60
・安静時心拍数を足す:60+60=120
この方の目標心拍数は、120拍/分程度ということになります。運動中にこの数値を目安にできると、「今日はちょうどいい強度で動けている」という感覚を、数字として確認できるようになります。
なお、「220-年齢」はあくまで簡易的な推定式であり、実際の最大心拍数には個人差があります。高齢の方では「208-0.7×年齢」という式の方が実際の値に近いとされる報告もあり、目安の一つとして捉えておくとよいでしょう。
④ どんな場面で活用できる?
・ウォーキングやジョギングの強度の目安を知りたいとき
・脂肪燃焼を意識した運動をしたいとき(強度40〜70%程度がこの目的で使われることが多いとされます)
・運動に慣れてきて、次のステップを考えたいとき
⑤ よくある誤解
❌ とにかく汗をかけば、それだけ効果がある
↓
✅ 強すぎる運動は継続しにくく、弱すぎる運動は十分な効果を得にくい。自分に合った強度を知ることが大切
❌ 心拍数の計算は誰にでも同じように当てはまる
↓
✅ 服薬状況や持病によって、心拍数の反応は変わる場合がある
⑥ 薬剤師からのポイント
血圧の薬(β遮断薬など)の中には、心拍数の上がり方そのものに影響を与えるものがあります。そうした薬を服用中の方は、心拍数だけを基準にすると実際の運動負荷とずれてしまう場合があるため、自己判断で強度を上げすぎず、かかりつけの医師・薬剤師に相談しながら運動強度を決めることをおすすめします。
また、心臓に持病がある方は、運動を始める前に必ず医師に相談し、無理のない強度(一般的には50〜60%程度が目安とされています)から取り組むことが重要です。
⑦ 今日のまとめ
「なんとなく」運動するより、自分の心拍数を知って強度を確認するほうが、効果も実感もつかみやすくなります。すべてを厳密に管理する必要はありません。まずは一度、自分の目標心拍数を計算してみるところから始めてみてください。
筋肉薬剤師 北川俊一 / Well Lab
©2023 TSUNAGARUCRAFT